平成19年度JCOMM賞 受賞者概要

JCOMMマネジメント賞
かしこいクルマの使い方を考えるプロジェクト京都

                                                             京都府

 近年の自動車利用増大の要因は、私たち自身のライフスタイルの変化や都市構造の変化、そして家庭に自動車が行き渡り、クルマがあるからと、ついつい使ってしまう意識などによるものです。そこで、京都府では、京都議定書誕生の地として、京都都市圏を中心に環境的に持続可能な豊かな交通・環境づくりを目指し、@都市圏として交通を考え、A出来るだけ多くの府民・企業・学校・NPOなどと一緒に、Bモビリティ・マネジメント(以下MMという)などコミュニケーションを中心としたソフト施策を行う、「かしこいクルマの使い方を考えるプロジェクト京都」を実施しています。
 企業との施策では、17年度から宇治地域通勤交通社会実験として、通勤者5,000名に実施したTFPでは、鉄道利用者が大きく増え、自動車利用が減少。また、18年度にモニタリングした結果、その効果が継続していることも確認されました。
 さらに、女性団体・老人会・自治会と連携して「お出かけマップ」を作成し、地域に配布する居住者向けMMを6市町で実施し、地域のバス利用者が増加しています、久御山町内の全小学校ではバスをテーマにした授業を展開するなど、企業・地域・学校と連携して、都市圏全域でMMに取り組んでいます。


−JCOMM実行委員会から−
 H16年度から持続的な運営がなされ、MM専任の職員を配置すると共に、MMに関わる基本計画を整備し、多様な組織と連携を図りつつMM推進体制を築いた点が高く評価されました。現在、10市町村にまで取り組みが拡がり、また、住民、職場、学校など多様な主体にコミュニケーションを実施し、MMの持続的・効果的な展開の見本となる取り組みとしてJCOMMマネジメント賞に選定されました。


JCOMMマネジメント賞

大分市を中心とする地域における公共交通転換可能性調査事業


        公共交通機関利用促進対策事業調査実施委員会 
        (大分バス()・大分交通()()大分県バス協会・大分県企画振興部総合交通対策課・
        大分市都市計画課都市交通対策課・東京工業大学藤井聡・()ケーシーエス九州支社)


 大分市内には約三百系統と多くのバス系統が運行されている上、系統に付された番号の体系が会社毎に異なり、また、事業者共通のバス路線図が存在しないなど、利用者にとって分かりにくいものとなっていた。このため、@利用者向けの情報提供の改善とA適度なインセンティブを組み合わせた大規模なコミュニケーションを併せて講じることによるバスの利用促進を目的に、NEDOの補助を受けて実験を行った。
 具体的には、各運行系統にアルファベットと数字を組み合わせた事業者共通のルールに基づく系統番号を設定し、車両の行先表示器やバス停掲示の中心部路線図(新規に作成)と時刻表に表示した。また、説得情報が記載されたバス路線図を大分市内全世帯(約19万世帯)に市報とともに配布するとともに、市役所の転入届受付窓口でも配布した。
 この結果、運送収入の減少トレンドの緩和効果が年間約5千万円と推計された他、プロジェクトライフ4年と設定した場合の省エネルギー効果及び二酸化炭素削減効果の総事業費に対するB/Cは3.55と推計された。
 また、広告収入によるバス路線図の継続発行が可能との知見が得られたため、平成19年6月より、地元酒造会社(八鹿酒造(株))をメインスポンサー、バス業界の編著、印刷会社(佐伯印刷(株))発行、行政(県・市)が配布や広報に協力、との体制で、毎年約10万部を発行し、市役所の転入届受付窓口やバス車内等で継続配布することとなった。

−JCOMM実行委員会から
 系統番号の変更といったバスの基礎的な情報提供改善と合わせ、マップの市域全戸配布、転入者・通勤者MMという幅広いMMに取り組み、市域全体のバス利用者増をもたらしています。また費用便益分析を体系的に行い、単年度の取り組みにも関わらず費用便益比3.55という大きな効果を得たことを明らかにしている点も特徴です。今後のMM施策の手本となる取り組みとして高く評価され、JCOMMマネジメント賞に選定されました。


                                        (以上、二件、50音順表記)


JCOMMデザイン賞
福岡における『かしこいクルマの使い方』を考えるプログラム情報グッズ群

                      小椎尾優 (前国土交通省九州地方整備局福岡国道事務所計画課
                                (現国土交通省九州地方整備局道路部地域道路課)
                       中村俊之・北村清州・須永大介・牧村和彦((財)計量計画研究所)


 福岡における「かしこいクルマの使い方」を考えるプログラムでは、対象者一人ひとりのニーズに的確に応えられるグッズ群(以下MMグッズ)を作成し、地球温暖化問題をはじめ、福岡都心での交通問題の解消を目的にMMのデザイン開発を行った。
  MMグッズには、@「『かしこいクルマの使い方』を考えるためのグッズ」、A「『かしこくクルマを使う』ためのグッズ」、B「プログラム関連グッズ」の3種類に大別され、これらを収納ボックスに収納することで一体性を高めるとともに、プレゼントとしての演出を図っている。
  「『かしこいクルマの使い方』を考えるためのグッズ」としては、調査の趣旨とクルマ利用についての事実情報提供を目的とした「調査趣旨冊子」および安全・健康・環境・コストに関する4種類のリーフレットを作成し、4種類のリーフフレットについては市民の関心度合いに応じて配布提供を試みた。
  「『かしこくクルマを使う』ためのグッズ」としては、7種類を作成した。このうち「バス停マップと時刻表」は、行きだけではなく帰りのバス停や時刻表を利用可能な系統別にまとめた携帯型として作成し、所要時間の認知が現実と乖離している結果を鑑み、バスロケデータの分析結果も踏まえ所要時間の情報も記載した。アンケートでは、約半数の対象者が天神地区に出かける際に「バス停マップと時刻表」を利用したと回答するなどの結果が得られ、大変好評であった。
  また、「プログラム関連グッズ」には、MMグッズに対する追加のオーダーが受けられる「注文シート」や地元バスのミニペーパークラフト等があり、さらに対象者不在時には市民に馴染みのある宅配便の不在票と類似したデザインの不在票と手書きのメッセージを投函するなど、丁寧さを重視している。
  このようなMMグッズを用いたコミュニケーションを行うことで、クルマ利用時間が事前事後で22%減少するなどの効果が現れており、一人ひとりに対するきめ細かなコミュニケーションとそのためのグッズというトータルでのMMデザインが、かしこいクルマの使い方の普及に貢献できたものと考えている。

JCOMM実行委員会から
 動機付け冊子、公共交通路線図、公共交通時刻表などが一つ一つ入念に検討され、機能性の高いグッズとして仕上げられていることに加え、付箋やマグネット等の付録的なグッズも含めた全体のデザインが統一されていることで「ブランド化」が図られている点が高く評価されました。今後のMMグッズ作成のモデルとなる可能性に鑑み、JCOMMデザイン賞に選定されました。


JCOMMデザイン賞

wap (和歌山都市圏公共交通路線図)


                                        WCAN交通まちづくり分科会マップチーム

 和歌山都市圏公共交通路線図「wap」のコンセプトは「マップを使って街を歩き倒す」こと。「wap」の特徴は(1)「鉛筆でも容易に書き込める」ことをねらい、ありがちなコート紙ではなく非木材紙を採用したこと、(2)路線沿線施設の記載はできるだけ控え、「wap」を手に取った人が自分自身に必要な沿線施設やメモを自由に追記できるように配慮、(3)色覚バリアフリーを意識しできるだけ配慮、(4)公共交通に関心が薄い方にも手にとっていただきやすいよう「路線図」らしくないポップな表紙デザイン、など。このwapを使って気軽に町中を巡ることで個々人が「世界でひとつだけのwap」が完成できるしかけを施し、「まちの再発見」のためのツールとしても使えるものを目指した。
  実際の地形図をベースにしているので、居住地あるいは現在地・目的地と公共交通機関との位置関係が明確になるメリットがあり、バスターミナル利用者約100名の対面式アンケートでも約8割が「このwapがあれば、バス利用の増加が期待できる」あるいは「バスへの興味・関心は増す」と好意的な反応を示している。また、事業者も路線を案内する際にこの「wap」を活用することもあるという。
  「wap」の補完情報はwap ONLINEhttp://ocean547.net/wap/)にて最新情報を配信することとしているほか、沿線の情報や画像の投稿を受け付ける体制を執り、wapを軸に「街を発見する」機運の醸成に努めるほか、学校現場などの連携を図れる体制を整えていく。

JCOMM実行委員会から
 全体的品位に加え、色使い、利用者自身が鉛筆で書き込むことを想定した地図内の余白の使い方や紙質、キャッチコピーならびに地図の使い方の説明文の質、色覚異常者への配慮など、デザインの意匠性ならびに公共交通路線図としての完成度が高く評価されました。今後、他の地域で公共交通路線図を作る際に大いに参考になると考えられることから、JCOMMデザイン賞に選定されました。

                                        (以上、二件、50音順表記)


JCOMM技術賞
健康歩行量TFPに向けた技術開発(受賞研究業績=中井祥太・谷口守・松中亮治・森谷淳一:健康意識に基づく万歩計を用いた歩行量TFPの実施効果分析,第1回日本モビリティ・マネジメント会議,2006,他)

                              中井祥太 (前岡山大学大学院(現福岡地所株式会社))

 現在一般的に行われているMM手法は「環境改善」「渋滞解消」「公共交通利用促進」を動機付けとした技術群であり、「個人の健康意識」に重点的に着目したMM手法の開発は行われていなかった。本技術開発では、私的動機である「個人の健康意識」の活性化を通じ日常生活の中で歩行量増加を促す新しく簡便な技術手法(健康歩行量TFP)を開発し、その実施を通じて自動車利用の削減、公共交通利用の促進、福祉コストの削減を達成するとともに、個人の公共心を喚起するきっかけにつなげようとするものである。
 健康歩行量TFPは、@誰でも入手できる万歩計を用いて起床時から就寝時に至る詳細な歩行実態を調査する手法、Aその結果に基づいた健康促進のための歩行量増加に向けた診断カルテの作成や、歩行量増加の行動プラン票の作成技術、B継続効果も含めた改善実態の把握・評価法、から構成される独自の一連のシステムから構成されている。4,000通り以上にも及ぶ個別の診断カルテの作成基準の策定や、独自のコミュニケーション技法に至るまでの調査技術を確立することで、誰にでも簡単に同様の調査が実施可能となっている
 その有用性についても、1日の歩行量が約30%増加し、副次的効果として自動車利用時間が約27%削減されるという結果も得られている。健康に対する動機付けでは、その問題をより身近に感じることが出来るため、公共的な問題意識の低い被験者に対しても、一定の効果を得ることが確認できた。また、健康歩行量TFPと都市整備を有機的に組み合わせることで、環境負荷が低く、居住者の健康レベルを維持できるまちづくり方策を検討可能であることも示された。


JCOMM実行委員会から−
 今回のTFPは、近年社会的関心がますます増大しつつある「健康」に着目したもので、これまで対象とし難かった人々に訴求できる点に大きな特徴があります。また、TFPの原点である丁重なコミュニケーションを万歩計を活用しつつ展開し、その大きな有効性を実証的に明らかにしています。ついては、その新規性・有用性が共に高く評価され、この度、JCOMM技術賞に選定されました。