平成20年度JCOMM賞 受賞者概要

JCOMMマネジメント賞
福山都市圏におけるベスト運動を核としたモビリティ・マネジメント
−交通円滑化総合計画を活かした5年間に渡る包括的な取り組み−


            福山都市圏交通円滑化総合計画推進委員会事務局
              (国土交通省中国地方整備局福山河川国道事務所調査設計第二課・
              広島県福山地域事務所建設局事業調整班・福山市建設局都市部都市交通課・
              福山コンサルタント西日本事業部

 福山都市圏のMMの取り組みは,福山市・府中市・尾道市・笠岡市・井原市からなる人口約70万人の圏域を対象に,地域の渋滞緩和・地球温暖化防止を目的とし,主体施策としての「ベスト運動」とその他定着支援施策群との連携により,都市圏全体にMMの考え方を導入して取り組んできた.
 「ベスト運動」は,持続可能な仕組みとするため,
パソコン・携帯電話の情報通信機能を活用した会員登録制のTFPであり,会員からのメールによる参加報告を毎月集計し,渋滞損失・CO2削減量の効果をフィードバックしている.会員募集活動として,企業へのアプローチは述べ2,500社以上を行い,現在の協賛企業は130社,会員数は11,000人を越え,市民に認知・定着している.
 また,「ベスト運動」を支える支援施策として“人々の意識変化を促す”ための「小学校TFP」,「企業・居住地TFP」,「交通フォーラム」や,“参加しやすい環境づくり”として「中心部レンタサイクル」,「交通情報提供システム」などに取り組んできた.
 道路改築,交差点改良などのハード施策とMM活動により,交通円滑化総合計画の目標であるピーク時所要時間の短縮は約9割達成され,これにより,渋滞損失時間を12%,CO2排出量を5%削減する効果を確認した.また,計画達成へのMM寄与度は約3割(渋滞損失時間の場合)と十分高いことから,「ベスト運動」を核とした仕組みは,2008年度(平成20年度)以降の円滑化総合計画においても,継続実施されることとなった.


−JCOMM実行委員会から−
 明確な目標の下,ベスト運動を核として持続可能なプラットフォームが整備された中,多様な主体に多様なアプローチで働きかけ,着実に参加者や協賛企業の増加と定着がなされています.その結果,環境問題や渋滞問題への貢献が顕著に現れており,費用対効果が7以上という成果が得られています.広域での運動体制が確立している点が先進的で,かつ,効果等を定量的に把握しつつ持続的なマネジメントを展開している点が高く評価できることから,JCOMMマネジメント賞に選定されました.


JCOMMプロジェクト賞

筑波大学新学内バス導入と利用推進MMプロジェクト


                                          筑波大学 

 本プロジェクトでは,全国初の大口特約一括定期により,国内の大学では類を見ない便利で安価な学内バスシステムを導入した.このバス導入により,(1)学内バス運営に関する経費節減,(2)自動車利用の削減による環境負荷の低減,(3)自家用車を使えない人々に対する移動に関する公平性の確保,という効果が確認されている.
 またその利用促進として,「動機付け・利用証利用例・購入方法・購入申込書・携帯可能なバス時刻表」を1枚にまとめたチラシとつくば市内のバスマップを組み合わせた大学バス利用促進MMキットを作成し,大学組織を介して学生・教職員(総計9,731)に配布した.
 このバスシステム導入とMMにより,教職員の通勤におけるバス分担率が2倍となる等,バス定期券の購入及びバス利用を促進する効果が確認されている.この効果を環境負荷に換算すると,通勤・通学交通におけるCO2 排出量が全学で約12%削減されたとの試算(筑波大学都市交通研究室)が報告されている.
 一方で,バス路線や時刻表は頻繁に変更されるため,有効期間は短く,利用者の立場からは継続的な発行体制が不可欠である.本プロジェクトでは,バス路線・ダイヤの変更に対応して,チラシは3回,バスマップは5回の改良を加えて,毎年度春の利用証購入時期に併せて配布を継続的に行っており,今後も財源を模索しつつ,継続的に発行していく予定である.

−JCOMM実行委員会から
 利便性が高く,かつ,利用者の経済負担の小さいバスシステムを導入すると共に,効果的なコミュニケーション施策を展開することによって,筑波大学という大規模な事業所における通勤自動車分担率の二割程度の削減とバスの大幅な利用促進に成功しています.ハードとソフトの組み合わせによる自動車から公共交通へのモーダルシフトの達成は,モビリティ・マネジメントにおける一つの理想的なプロジェクトであるとも言えるものであることから,JCOMMプロジェクト賞に選定されました.



JCOMMプロジェクト賞
別所線の利用促進と沿線の観光振興を目的とした観光型モビリティ・マネジメント


        長野県上田市における観光資源を活用した
                         別所線の活性化方策に関するワーキンググループ
        (国土交通省北陸信越運輸局・上田市・エヌシーイー(株)・上田電鉄(株)・
        別所温泉観光協会・別所温泉旅館組合・別所線を考える会・信州大学高瀬達夫)

 別所線は,長野県上田市の上田駅から別所温泉駅までを結ぶ全長11.6キロメートルの上田電鉄の鉄道路線である.長野新幹線及びしなの鉄道の駅でもある上田駅を起点とし,終点駅には,「信州の鎌倉」と呼ばれる風光明媚な観光地である別所温泉があることから,同地を訪れる観光客の移動手段としても活用されている.
 しかしながら,全体の利用者数については,長期的には減少傾向にあり,別所線を地域の公共交通として存続させるためには,その利用促進が大きな課題となっている.特に,観光客による利用については,今後も増加が期待できることから,観光客による別所線利用を促進するための効果的な取組みが求められている.
 こうした状況に対応するため,鉄道事業者,旅館,観光協会,行政等の関係者の協力のもと,沿線の観光資源を最大限に活かし,観光客による別所線利用を促進することを目的としたモビリティ・マネジメントを実施した.具体的には,別所温泉を訪れた観光客を対象に,3回のコミュニケーションによるTFPの実施を通じて,別所線の利用によって周辺の観光資源がより生きる魅力的な観光の提案や公共交通を利用した観光の意義の説明を行い,観光客の観光行動を,自動車利用を前提としたものから別所線等の公共交通利用も選択肢としたものへと変容させることを企図した.
 その結果,観光客を対象としたTFPに関して,一定の行動変容の効果を確認することができたとともに,プロジェクトの実施を通じて,観光客を対象としたモビリティ・マネジメントを実施する際のツールの作成や関係者の連携のあり方の一例を示すことができた.

−JCOMM実行委員会から
 観光交通に起因する渋滞や温暖化ガスの増加などの各種の問題を緩和することを意図した「観光型モビリティ・マネジメント」の推進は,これまでのモビリティ・マネジメントの展開に於いて十分に取り組まれてこなかった重要な課題の一つとなっていました.今回の取り組みはこの点に着目し,観光地におけるマイカー利用の抑制と公共交通利用の促進を図るとともに,公共交通を活用した観光メニューによる観光地の魅力向上を目指した点に高い新規性が認められることから,JCOMMプロジェクト賞に選定されました.



JCOMMプロジェクト賞
免許更新時講習等を活用したモビリティ・マネジメントの取組とその効果


          京都都市圏CO2排出削減広報検討会議
          (事務局:国土交通省京都国道事務所調査課・京都府建設交通部交通対策課・
          中央復建コンサルタンツ(株)計画系グループ)

 京都議定書の目標達成に向け喫緊の課題となっている自動車からのCO2排出削減を目的として,京都府下約150万人の免許保有者が少なくとも5年に1度は必ず受講する「免許更新時講習」の機会を活用したモビリティ・マネジメントの取組と効果計測を行った.
 具体的には,従来は交通事故統計のみを提供していた講習資料に,不要不急の自動車利用を見直す「かしこいクルマの使い方」や「エコドライブ」の情報を追加した.形式は従来のA5サイズ×8ページの冊子形式からA1サイズの一枚物に変更して,表面はA5×16ページを使った情報提供面,裏面は死亡事故発生箇所や渋滞情報などの入った「ロードマップ」を掲載する地図面とした.「ロードマップ」にはドライブに役立つ観光施設や道の駅の情報を掲載することによって,受講者が手元に残して機会のある度に閲覧する気になるような工夫を行った.
 本資料を平成19年9月から平成20年3月までの期間に講習を受講された約22万人の人々に配布した.平成1912月に資料の効果を検証するためのアンケート調査を行った結果,自動車からのCO2排出量を年間約5,700t-CO2/年(上限値:約10,400t-CO2/年,下限値:約1,020t-CO2/年)削減する効果が確認された.あわせて,約8割の方から資料について「参考になった」との評価を得た.なお,本取組については平成20年度も継続して実施されている.

−JCOMM実行委員会から
 地域内のドライバー全員に「かしこいクルマの使い方」を呼びかける大規模コミュニケーションの展開は,モビリティ・マネジメントの推進に於いて最も重要な課題の一つとなっています.その中でこの取り組みは,自治体と国,ならびに警察が連携しつつ,当該地域の全てのドライバーに定期的に訪れる「免許更新時講習の機会」においてMMコミュニケーションを図るものです.この取り組みは全ドライバーに必ずメッセージを届けることが出来るという点に於いて当該地域のモビリティに大きな影響を持続的に及ぼしうる可能性を持つものであり,かつ,そのアイディアは他地域の模範と成りうる高い新規性を持つものであることから,JCOMMプロジェクト賞に選定されました.


                                        (以上、三件、50音順表記)


JCOMMデザイン賞

ふくいのりのりマップをはじめとするホジロバ交通情報関連ツール一式


                  特定非営利活動法人ふくい路面電車とまちづくりの会(ROBA)

 歩行者・自転車・路面電車・バスなど,環境にやさしい公共交通手段(ホジロバ交通)に関する情報を,「家を出るまえから帰宅するまで」の連続した行動として総合的にとらえてデザインすることで,車に頼りがちな行動をも変えられると考え,一連のホジロバ交通情報関連ツールを作成し,提供している.
 バス電車マップ「のりのりマップ」は,最も基本となるホジロバ(歩自路バ)マップとして,地名や施設による位置情報,移動距離などが容易に確認できるよう,都市基本図をベースとして作成した.また,姉妹版の歩行者・自転車マップ「りんりんマップ」を作成し,併せて持ち歩きやすいようにデザインした.「のりのりマップ
mini」は無料配布用の手折り廉価版で,県内小中学校の社外活動を支援する総合学習用教材,高校新入生バス電車通学定期購入時の案内資料,転入者へのクルマ購入までの公共交通案内資料として使用している.また,時刻表は,WEB版の「ばすでんしゃねっと・ふくい」でマップをベースに全ての路線別の最新時刻表を提供するとともに,各地域と交通ターミナルを結ぶ全ての交通手段を統合した平日休日別の往復時刻表「地域時刻表」を提供し,プリントアウトして持ち歩けるようにしている.
 「協働による公共交通とまちづくりのすすめ」は,市民に日常の生活行動を見直し公共交通の利用を促すための公共交通まちづくりガイドブックで,ホジロバまちづくりキャラバンの資料として活用している.

JCOMM実行委員会から
 限られたスペースにバスの始終発時刻や運行間隔等のサービスレベル情報をコンパクトにまとめている点と,携帯性や作成費を考慮しつつ,路線図の大きさや綴じ方等について改善を加え続けながら継続した取組として一連のバスマップを作成している点が高く評価され,JCOMMデザイン賞に選定されました.


JCOMMデザイン賞
茨城県内高校新入生のための公共交通利用促進パンフレット


                                茨城県公共交通活性化会議・齋藤綾

 茨城県は自動車の交通機関分担率が9割を超え,様々な問題が顕在化している.このような中,県が平成193月に策定した茨城県公共交通活性化指針に基づき,茨城県公共交通活性化会議は,県内高校の新入生を対象に「公共交通を利用した通学方法について考えてもらう」リーフレットの制作と配布を行った.
 高校生は,茨城県内の公共交通機関の重要な顧客であるが,地域公共交通が危機的状況にある茨城県においては,高校生の通学手段も公共交通から自家用車の送迎,バイク,自転車などに転換しつつあるのが現状である.

 この状況を鑑み,新たな交通行動の「習慣」をつける絶好の機会である入学の時期に「公共交通を利用した通学方法について考えてもらう」リーフレットの配布を通じて,平成20年度の県内高校の新入生・保護者の通学時の公共交通利用の意識醸成を図るためのプロジェクトを実施した.リーフレットの内容は,「公共交通は環境に優しい」「利用者減の公共交通を維持するには多くの利用が必要」等をわかりやすく説明したうえで,「公共交通を利用した通学」を呼びかけるものとなっている.
 配布は,県内の高校128校の新入生約3万人に新入生説明会や入学式において各学校を介して行っており,県立高校(全日制・定時制・専攻科)104校,私立高校(全日制・専攻科)23校,国立高等専門学校1校に配布することが出来た.この効果を把握するため,現在,各高校の1年生と2年生を対象に,交通手段に関する意識と行動のアンケート調査を行っているところである.

JCOMM実行委員会から
 通学行動が習慣化されていない高校入学時に新入生を対象として配布することにより動機付け効果を高めるとともに,入学時に受け取る大量の配布物の中に混じっても手に取って情報を読んでもらえるような,くりぬき窓のついた表紙・裏表紙や1頁が正方形となる蛇腹折りの採用といった印象的な意匠が高く評価され,JCOMMデザイン賞に選定されました.

                                        (以上、二件、50音順表記)


JCOMM技術賞
WebGISを活用した交通行動自己診断システムの開発とトラベル・フィードバック・プログラムへの適用(受賞研究業績=大森宣暁・中里盛道・青野貞康・円山琢也・原田昇:WebGISを活用した交通行動自己診断システムの開発とトラベル・フィードバック・プログラムへの適用,土木学会論文集D,vol.64,No.1,pp.55-64,2008.他)

                                 大森宣暁・原田昇・青野貞康・中里盛道

 
開発した技術Internet-based Simulation Model for Activity Planning (iSMAP)のコンセプトは1970年代にオックスフォード大学で開発されたHouseholdActivity-Travel Simulator (HATS)GISおよびWeb上で実現するものである.具体的には,個人の一日あるいは複数日の実際の活動パターンデータを収集し,活動パターンに関わる様々な指標(移動時間・費用,CO2排出量,カロリー消費量等)とともに地図上にわかりやすく表示し,また複数の代替活動パターン(交通手段の変更等)を生成・表示し,比較・検討できるシステムである.本システム利用者は,Web上で自身の毎日の交通行動を自己診断し,代替案を比較・検討できることから,より環境負荷の小さな,あるいは健康に良い活動パターンを,視覚的また具体的に認識することが可能である.Webベースであることから,従来の紙媒体を用いたTFPにおけるデータ収集・分析・評価・アドバイス等の各段階での人的・時間的・金銭的コストも節約できる.また,近年Webを活用したTFPの事例も見られるが,GPS携帯電話を活用した詳細な行動データも活用して,代替活動パターンを自動的に生成し,GISを活用して具体的な代替案を表示・比較・検討できるシステムは存在せず,TFPのコミュニケーションツールとして非常に有用で独自性および新規性の高い技術である.
 
JCOMM実行委員会から−
 WEBを活用したTFPには様々な可能性が存在することがかねてより期待されていたものの,その技術開発は十分に進展していなかったという問題がありました.そうした中,この研究は,種々の技術的課題を克服するものであり,そうしたかねてからの期待に大いに応えるものでありました.そして,実証研究からもその有用性が改めて確認されており,今後のMMの実務展開に大いに資することが期待される技術提案がなされているものと考えられます.こうした点が評価され,本業績は,JCOMM技術賞に選定されました.