平成21年度JCOMM賞 受賞者概要

JCOMMプロジェクト賞

倉敷・水島コンビナート・エコ通勤実証実験の取り組み
〜大規模事業所8社を対象としたエコ通勤に向けた取り組み〜


                         水島コンビナート・エコ通勤検討協議会事務局
              (倉敷市建設局都市計画部交通政策課・(株)オリエンタルコンサルタンツ)

 本プロジェクトでは、倉敷市南部に位置する水島コンビナートにおいて、エコ通勤実証実験を行い、今後の職場交通マネジメントの在り方について検討を行った。公共交通が不便なため自動車通勤者が多く、地域の公共交通利用者は減少の一途であることから、バス路線の減便・廃止が拡大しており、また、地元商店街の衰退も深刻な状況である。
 平成20年11月に約2週間、主要企業8社の従業員を対象にエコ通勤実証実験を行った。実験では最寄り駅と企業を結ぶシャトルバス運行、レンタサイクルや、「できることからできるペースで」のコンセプトで各企業が独自の取組みも行った。また、バスマップや啓発冊子等のツールの配布に加え、TFPアンケートや商店街活性化を狙った施策も展開した。
 実験では、ターゲットとした日勤者の約3割が参加、シャトルバス利用者が1日平均約100人、相乗りや自転車通勤等を含めると1日平均約220人がエコ通勤し、約500kg-CO2を削減できた。また、公共交通機関等が運行していない時間帯に勤務しなければならない交代勤務者は、当初エコ通勤が難しいと考えられたが、自転車を利用するなど自発的参加も見られた。従業員の満足度は概ね高く、代替交通手段があればエコ通勤を実施する意思を示すとともに、実験後に他地域の取組状況について、視察を検討する企業が出るなど、企業担当者の意識・行動変容を促進した。
 実験により、本地域でもエコ通勤の展開可能性が確認できたほか、企業や地域の意識に変化を与えた効果は大きく、各企業や地域がそれぞれの実情に応じ、自主的に取組む雰囲気が芽生えた。今後は、協議会等のネットワークを活かしつつ、地域にエコ通勤を根付かせていくことが重要である。

−JCOMM実行委員会から
 「エコ通勤」として大規模工場地帯におけるそれぞれに考えの異なる多様な企業群を地道なコミュニケーションを通じて広く取り込む一方、きめ細やかな対応を通じて完成度の高い効果的なプロジェクトを遂行している点が高く評価されました。また、取り組みを通じて公共交通利用者の増加や新たな地域づくりの芽もうまれており、応用可能性にも富んだエコ通勤の規範的な取り組みとして、JCOMMプロジェクト賞に選定されました。




JCOMMプロジェクト賞
大学生による富士市特定バス路線の利用促進策とその効果分析


                            南山大学石川研究室・富士市役所都市計画課

 静岡県富士市では、市街地中心部における地域住民の交通利便性の向上とバス離れを食い止める策として、JR富士駅を起点とする循環バス「ひまわりバス」を運行している。しかしながら、その利用者数は低迷しており、効果的な利用促進策が望まれていた。
 そこで、本プロジェクトでは、市街地循環バスの利用促進のため、新たなMMツールとプロジェクトを開発し、その効果をwith-without比較が可能なバス利用者推計モデルとアンケート調査により計測した。本プロジェクトでは、南山大学石川研究室の学生がプロジェクトチームを編成し、富士市役所都市計画課の協力を得て、プロジェクトの企画、運営、効果分析まで実施した。新たな情報提供ツールとしてフリーペーパー(無料交通情報誌)を作成し、沿線全域の地域住民への情報提供を行うとともに、利用促進イベント及び絵画コンテストによって、より深く地域住民に対する意識啓発を行った。また、利用実態を考慮して、医療施設、商業施設に、最寄りのバス停の時刻表等を記載したオーダーメイド型の時刻表ポスターを掲示し、バス利用の利便性向上を図った。
 本プロジェクトの実施により、実施後4ヶ月間で約1400人、約8%増加の効果が得られた。また、大学生がプロジェクトの企画から、イベント運営、その他各種MMツールの作成、効果分析まで全てを行っており、教育効果も高く費用対効果の高いプロジェクトであった。


−JCOMM実行委員会から
 バスの利用促進をはかるため、交通計画の素人といえる大学3年生のグループが主体となって企画・デザイン・実施を行った取り組みで、フリーペーパー、グッズ、時刻表、イベントなどの各要素がいずれも手作り感あふれる様々な工夫で満載されている点が高く評価されました。一方で効果計測もきちんと考慮されており、MMが本来持つ楽しさが豊かに伝わる取り組みとして、JCOMMプロジェクト賞に選定されました。


                                        (以上、二件、50音順表記)


JCOMMデザイン賞

名チャリマップおよび名チャリVI


               名チャリプロジェクトチーム(牧野暁世、橋口萌、堀田智世、小沢千晴)

 「名チャリ」とは、名古屋市内で撤去された放置自転車を再使用したコミュニティサイクルの愛称である。名古屋市中心部で「名チャリ」を導入することで、CO2排出量の削減、放置自転車の削減、回遊性の向上が期待できる。名古屋大学大学院名チャリプロジェクトチームは、数年にわたって名チャリの導入可能性を調査・研究しており、これまでに社会実験を2度実施してきた。平成20年度社会実験は9月21〜23日に実施され(21日は雨天中止)、2日間で約950回の貸出を記録した。
 名古屋独自の新公共交通を目標とする名チャリには、地域主体とのパートナーシップが不可欠である。名チャリマップおよび名チャリVI(ロゴマーク、映像、コンセプトイラスト、概要版)は、名チャリの周知と名チャリが持つ理念の理解を市民に促すことを目的として作成された。名チャリマップは、名チャリの利便性向上や適正利用の促進を目的とし、名チャリステーションや既存の公共交通機関の情報等を盛り込みながら、携帯性を重視して作成された。名チャリVIは、平成20年度社会実験を経て、多くの市民が名チャリの本格的実施に賛同していることが明らかになったため、公共交通としてあるべき「信頼」、「安心」といったイメージを視覚化するために整備された。これら一連の制作は、名チャリブランド構築の第一歩と考えており、今後も様々な展開が期待される。

JCOMM実行委員会から
 ネットワーク型のレンタサイクルの認知度を高め、利用促進を図るため、自転車マップ、チラシ、ポスターなど多様なツールに、統一されたロゴマーク、デザインが使用されており、「ブランディング」に熱心に取り組む姿勢が高く評価されました。また、新しいロゴマーク・関連イラストの意匠性についても高く評価され、JCOMMデザイン賞に選定されました。



JCOMMデザイン賞
「バスマップ沖縄」紙版マップ及びWebサイト


                               谷田貝哲・気候アクションセンターおきなわ


 「バスマップ沖縄」では,バスの実際の利便性と,世間の低評価とのズレの原因が「バスの利用情報がわかりにくく,しかも入手しにくい現状」にあると捉え,バスの利用情報を記したマップを配布することでバスを常用しない人々がバスに気づき,バスを知るきっかけを作ることを狙っている.
 作成に際しては,「正確な情報を必要最小限」扱うことを心がけた.表紙や全体のイメージはヨーロッパの同種のマップに範を取り,極力「バスっぽさ」を抑えた,シンプルで主義主張のないデザインを目指した.沖縄特有の難読地名も(特に旅行者の)バス利用を妨げる遠因と考え,停留所の読み方を記したり,ピクトグラムを使用して表現の一般化を図ったりしている.
 紙のマップへの記載情報を絞った反面,Web上では路線別案内等の詳細な情報も扱い,ダイヤ改正等にも随時対応している.観光客の過半数が,レンタカー付きプランを出発地で予約してから来沖しているため,沖縄県外で沖縄のバス情報を得られるようにすることも,Webサイトの大きな目的である.
 取り組みの結果,バスマップを入手した県民の約半数が,「バスマップ入手後,実際にクルマの代わりにバスで外出したことがある」としたほか,日常的なバスやクルマの利用頻度が変化した人も1〜2割前後いるなど,交通行動の変容に一定の効果がみられた.
 今後も引き続き,外国語版バスマップの発行やWebでの時刻検索等,情報面からのバスの利用促進に取り組んでいきたい.

JCOMM実行委員会から
 バスマップは、必要な情報をシンプルかつ十分に盛り込んだ機能的なツールに仕上がっており、特に、路線図を模式的ではなく地図上に記載しており土地勘が無い外来者でも分かり易い点、難読地名の読み方を記載するなど、きめ細かな配慮がなされている点が高く評価されました。バスマップに掲載できない時刻表などをWEBにまとめており、両媒体の長所と短所を活かした情報システムになっており、その高い機能性が高く評価され、デザイン賞に選定されました。

                                        (以上、二件、50音順表記)


JCOMM技術賞
先進的オンデマンドバスシステムの開発と評価
(受賞研究業績=坪内孝太,大和裕幸,稗方和夫:過疎地における時間指定の出来るオンデマンドバスシステムの効果,日本ロボット学会誌Vo.27, No.1, pp.115-121, 2009他)

                 坪内孝太,大和裕幸,杉本千佳,稗方和夫,下村淳一,吉富広三


 
オンデマンドバスとは利用者の予約に応じて弾力的経路を組み、乗り合いを生じながら動く新しい公共交通機関である。本研究で開発したオンデマンドバス予約システムは、独自に開発したスケジューリングアルゴリズムにより、@利用者が到着時刻を指定できる、A約束した到着時間を保証できる特長を有している。既存のシステムの場合、オペレータが人手で経路計算を行うため、利用者は必ずオペレータに電話しなければならない。本システムは、コンピュータが自動的に運行計画を更新し自動的に車両に搭載されている車載器に最新の運行計画が伝達される仕組みのため、オペレータを介さずに利用者自身がパソコンや携帯電話から簡単に予約できる。ソフトもサーバーもSaaS (Software as a Service)形式でネットワークを通じて提供され、システムの導入および管理コストを革新的に安価にできる。基本システムを企業と共同で作り上げ、サーバーも商用サービスとしての展開を始めている。3地域が2009年度に実用化を行う予定である。自治体担当者が容易にサービスの導入設計ができるよう、@交通設計シミュレータの開発、A自治体担当者向けの意匠性の高いパンフレットを作成するなどシステムの普及も積極的に行っている。また、当該オンデマンドバス技術は海外のシステムと比較しても新規性があり、来年度には英国にて実証実験を計画し、予算措置も得ている。
 
JCOMM実行委員会から−
 この研究で開発されている「オンデマンドバス予約システム」は、到着時刻を保証できるシステムであり、既存のデマンドバスシステムでは対応することが難しかった通勤や電車への乗り継ぎ、医療機関の予約などの時間的制約の強い利用目的の異動にも対応できることから、オンデマンドバスの利便性を飛躍的に向上させるものであると高く評価されました。適切なソフト施策と融合することで地域のモビリティの質的改善が大きく見込める画期的な技術開発であることから、JCOMM技術賞に選定されました。


                    (※なお,本年度は,マネジメント賞は該当無しとなりました)