【インタビュー記事】日常生活を続けながら、23日間感染ゼロを達成中の台湾の公共交通政策とは

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台湾は新型コロナウィルス対策において、都市封鎖(ロックダウン)を講じていません。それにもかからず、新しい感染者数を「0」を達成したと聞きました。その中でも、台湾第3の都市、高雄市(たかおし、現地語でカオシュン)では、ウィルスと共存した交通政策に取り組んでいます。


高雄市の面積は約2952km2(佐賀県に近い)、人口は中心部が150万人、合併した周辺部も合わせると約277万人で(横浜や大阪に近い人口)、台湾南部に位置し重工業で栄える都市です。

 

 

図 台湾の移動目的別の人の動き
出典)グーグルCOVID-19 Community Mobility Report


※高雄市の市内の移動手段には、鉄道、地下鉄、バス、ライトレール(次世代路面電車)、自転車シェアリング(CityBike)、タクシーなどがあり、市内の公共交通の料金システムにゾーン制を用いる欧州の都市と異なり、台湾では日本のように、改札があり乗降時に交通系ICカードiPass(アイパス)で決済を行っています。

高雄市では、高雄市政府交通局が交通計画、マネジメント、規制などのルール作りを行い、運行を民間に委託しています。タクシーは民間がサービスを提供。バイクの交通分担率が高く、若者の交通事故が深刻で、約20年以上前に、クルマ中心の交通政策から、欧州のようなヒューマンセンタード(人間中心)な交通政策に方向転換した先進都市の一つです。

高雄市はMaaS(マース)にも取り組んでいます。高雄市の特徴は、バスやライトレール等の公共交通機関に加えて、自転車シェアリングやタクシー等を統合、アジアの中でも早期に実用化している点です。「MeN Go(メンゴ)」と呼び、運賃、決済、情報の最適化を統合した次世代の交通サービスで、多くの市民に利用されています。

 

高雄市政府交通局副局長の張淑娟に台湾と高雄市の公共交通における新型コロナウィルス対策を2020年5月8日にモビリティジャーナリストの楠田悦子さんが聞きました。

 

Q1.台湾や高雄市は、新型コロナウィルスの影響で、生活はどのように変化しましたか。

A 2003 年に感染拡大が問題となったSARS(サーズ)で蓄積された経験が、新型コロナウィルス対策に非常に役立っています。

特に、マスクの着用が非常に有効だと感じています。台湾の中央政府や高雄市は、欧米のように許可なく外出することや経済活動を禁止するようなロックダウン(都市封鎖)や、日本のような外出自粛といった措置をとっていません。新型コロナウィルス前の生活と変わらず、子どもたちは学校に通い、会社に行って経済活動を行うなど通常の生活を行っています。政府は、週末は外出を控えるよう推奨していますが、禁止されてはおらず、私たちは自由に外出することもできます。

その代わりに、明確なルールや仕組みを設けています。
どこに行く際にもマスクを着用し、手を頻繁に洗う、目・鼻・口を絶対触らない、検温の徹底、ソーシャルディスタンス(社会的距離1m)を保ち、感染しない、感染させない対策を徹底しています。

会社や図書館とったような建物や施設の中に入る際は、検温を行っています。また、台湾中央政府は、屋内で100人以上、屋外で500人以上集まる会議やイベントをこの間、禁止しています。外出を控えることを推奨していますが、私たちは自由に外出することができます。政府は人の流れが集中している場所をスマートフォンで知らせて、その場所に行かないように促します。

このような明確なルールと仕組みにより、ロックダウンや外出自粛をせずに、2020年5月7日の台湾の新型コロナウィルスの感染者数は0人でした。感染者は数人いますが、感染者は海外の渡航歴のある人です。

 

Q2.高雄市の公共交通機関への影響はどうでしたか?

A 高雄市の鉄道、地下鉄、バス、ライトレールの公共交通利用者数は約30%減少しました。一方で、高雄市が運営する自転車シェアリングCityBike(シティバイク)や電動原付など、マイクロモビリティのシェアリングサービスの利用が増加しています。

地下鉄は大きな打撃を受けました。利用者は、観光客が減少したため、約40%マイナスと急激に減少しました。特に週末は1日10万人を下回り約50%の減少です。

バスの利用者数は約20%の減少にとどまっています。自家用車を所有していない学生や高齢者などが日常的に利用しており、地下鉄よりも減少率が低いのではないかと考えています。

一方で、高雄市の自転車シェアリングの利用者数は3.8%増加しました。

図 2020年1月~3月までのマイクロモビリティの利用状況
Gokube:自転車シェアリング、irent:カーシェアリング、wemo:電動原付シェアリング


Q3.台湾中央政府は公共交通機関に関し、どのような対策を講じていますか?

台湾中央政府はいくつかの施行規則などのルールをつくりました。2020年4月7日以降、公共交通の乗客は地下鉄、ライトレール、バスに加えて、タクシー、フェリーに乗り込む際に、マスクの着用を義務付けました。タクシーは窓を開けて走行していますが、念のためマスクの着用も義務付けています。

マスクの着用は施行規則であるため、マスクの着用をしない乗客は乗車を拒否され、3000~15000台湾ドル(日本円で約9千円から5万円の)の罰金が課せられます。

それにともない、高雄市は公共交通に対して、マスクの着用が義務になったことを、利用者に伝えるために外のポスターを貼ったりするなどして、利用者への周知を徹底しました。

 

Q4.高雄市は公共交通機関に関し、どのような対策を講じていますか?

A 高雄市は2020年の旧正月前に、高雄市市長をトップする新型コロナウィルスの対策を検討するアカデミックセンターを立ち上げました。

高雄市では、高雄市交通局が運行計画を立てて、交通事業者に委託をするかたちをとっています。そのため、交通事業者に対しても対策を実施しています。高雄市が購入してマスクや車内清掃用の消毒液を提供しています。

高雄市は、公共交通事業者に、清掃を1時間に1回もしくは4時間に1回の頻度で、座席や乗客が触れる部分を高雄市が配布する消毒液を使って、消毒をしてもらっています。地下鉄は1時間に1回、バスは1循環する毎に1回清掃しています。

また、公共交通でも入場前の検温を4月から行っています。地下鉄、高速鉄道(新幹線)では、ゲートの上に乗客の体温を自動的に測る機械を設置して、体温が高い乗客の場合はゲートが空かないようにしています。フェリーでも実施しています。バスとタクシーは、検温が難しいので実施していません。

 

公共交通の乗客に対しては、マスクの着用、目口鼻は触らない、定期的な手洗い、スマートカード(日本の交通系ICカード)利用の推奨を行っています(高雄市のスマートカード利用率は80%を超えています)。車内には、ポスターでこれらを伝え、また、車外にも見えるようなプロモーション活動を積極的に進めています。乗客の多くが、バスが安全かどうか不安に感じており、「バスは皆さんの行動により安全安心に利用できる」ことを伝えていくことが大切だと考えています。

 

タクシーは民間会社が提供するサービスですが、消毒液を配布して清掃を高頻度で行ってもらい、高雄市からマスクの配布を行ってドライバーにマスクの着用をするように依頼しました。タクシーは窓を開けて走っています。

フェリーに対しても、高雄市からマスクと消毒液を配布し、マスクの着用と清掃を高頻度で行うように依頼しました。

高雄市の自転車シェアリングCity Bikeも利用者が握る自転車のハンドル部分を、約2時間毎に1回消毒液で清掃しています。マスクの着用は義務付けていません。

 

写真 地下鉄改札入口の様子。検温とゲートが連動している最先端の技術を導入

 

写真 バスのポスター(左:車内、右:車外)


Q5.高雄市は公共交通の利用者数の減少という危機をどのように克服しようと考えていますか。

公共交通の利用者は確かに減少しました。しかし、高雄市のMaaS「MeNGo(メンゴ)」の利用者数は減少しませんでした。MeNGoは通学や通勤者の日常の利用を支援するために提供しています。

このMeNGo利用者が減少しなかったという結果に非常に勇気づけられました。そのため、MeNGoの利用を促すために、高雄市は2020年3月29日から6か月間にわたりMeNGo利用料金の割引プロモーションを実施しています。その結果、2020年5月8日時点で、MeNGoパスの利用者数は約10%も増加しています。

また観光客が減少しているため、地下鉄と観光バスの運行頻度を減らしたり、車両代の割引するなどの救援パッケージを実施しました。

幸いなことに、ガソリンの燃料価格は大幅に下がっているため、バス事業者の損失を補うこともできています。

利用者の減少による損失部分は、補助金(税金)で補填する予定です。

 

Q6.最後に、日本にメッセージをお願いできますか?

A.    台湾中央政府は2003年のSARSの経験から学び、新型コロナウィルスのパンデミッ
クを防ぐためにタイムリーで迅速な行動を行いました。最も重要なポイントは、頻繁に手を洗うこと、マスクを着用すること、目口鼻をさわらないこと、ソーシャルディスタンス(社会的距離)を保つことです。台湾政府はマスクのリアルタイムマップを公開しており、予約して14日間に1回購入ができ、14日間に9枚のマスクを使います。

地下鉄やバスなどの公共交通の運行会社が2003年のSARSを経験しているため、その時のノウハウを活かしてどのように対応したら良いのか彼ら自身がよくわかっています。そのため、彼らが新型コロナウィルスに対する対応方法を高雄市に教えてくれました。高雄市役所の職員の中には、年齢が若く2003年の対応策を知らない人もたくさんいるからです。新型コロナウィルス問題が発生した早い段階で、高雄市と公共交通事業者とミーティングを開きましたが、たくさんの良い対応策案をもらい、ともに対応策を作ることができました。

日常の生活を続けながら、パンデミックと付き合っている台湾での知見や教訓が少しでも日本の早期回復に役立つことを期待しています。本日はありがとうございました。

 

【2020年5月8日 Zoomインタビューより】

お問い合わせ先(お問合せの際は、問合せフォームもしくはメールからお願いいたします)

一般社団法人日本モビリティ・マネジメント会議 事務局
〒615-8540 京都市西京区京都大学桂

(京都大学都市社会工学専攻藤井研究室内)

e-mail:info# jcomm.or.jp 

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