歴代の受賞者

■ 平成23年度

JCOMM実行委員会では、平成23年4月中旬までに、ご応募・ご推薦を頂いた取り組み・研究の中から、平成23年度JCOMM賞の各賞受賞者を選定いたしました。受賞者の方には、第六回JCOMMにて、表彰を行います。


題目 金沢市内の小学校を対象とした金沢版交通環境学習の継続的取り組み
受賞者

金沢市都市政策局交通制作部歩ける環境推進課

交通エコロジー・モビリティ財団

株式会社計画情報

受賞概要

金沢市では、平成19年度から交通エコロジー・モビリティ財団の支援を3ヵ年受け、平成21年度に金沢の地域性や教育方法に配慮した「金沢版交通環境学習」を確立した。平成22年度から本格実施となり、自転車安全教室と併せ、市内全小学校の3年生を対象とした導入版プログラムと、4~6年生を対象とした発展版プログラムが実施されている。

導入版では、自転車安全教室の事前学習に併せ、かしこいクルマの使い方やバスの乗り方について説明した「金沢版交通環境学習導入版DVD」を教員により視聴させ、自転車安全教室当日は、送迎用の路線バス車両で学習したバスの乗り方を実践、また指導員によりふりかえり学習を行っている。発展版では、実施希望校小学校教員と協力しながら、教員の自立的実施を目指し、当面は市が出前講座を行っている。発展版プログラムは、3つの標準パッケージプログラムを基本としているが、役割により「メインディッシュ」「副菜」「デザート」の小プログラムで構成されており、教員のニーズに合わせて上記の小プログラムを組み合わせることにより、学習プログラムを組み立てることが可能である。6年生2クラス72名の児童が、普段のクルマの使い方を振り返り、夏休み中に「めざせクルマ利用マイナス60分!」に取り組んだところ、約7,100分のクルマ利用を控え、2?ペットボトル約13,600本分の二酸化炭素の削減ができたなどの成果も挙げられた。

周知普及については、校長会や小教研での説明や、教員の夏休みの研修に位置づけたセミナーを開催し、市内全小学校の教員の参加を得るなどの取り組みを行っている。

また、学習プログラムの確立や周知普及方法については、教員や市の学校指導課担当者からなる作業部会を設立し、検討を行った。

現場教員の検討による教員ニーズに合った効果的な学習プログラムの確立、きめ細やかな周知普及活動は、長期的にみた安易なクルマ利用の抑制に働きかけ、既存制度との連携やDVDの作成などは、新規性、応用可能性が高いと取り組みであると言える。

JCOMM実行委員会から

金沢市内全域の小学校を対象とした教育MMの取り組みで、導入版から発展版へと段階的な組み立てを通じ、プログラムがよく練られています。既存の自転車安全教室にうまく連動させることで広く実現を可能にし、バス事業者の協力や教員の自律的参加についても工夫がされています。家庭への波及効果や他都市への応用可能性も高く、完成度の高い学校教育MMプロジェクトとしてJCOMMプロジェクト賞に選定されました。


題目

観・感・環、「ikeko」で発見!いけだのまねきエコ

~大阪池田市の地域通貨「ikeko」と連携したMMと、一連のMMパッケージ展開~

受賞者

特定非営利法人いけだエコスタッフ

池田市モビリティ・マネジメント検討会事務局

(①池田市市民生活部環境にやさしい課)

(②(株)オリエンタルコンサルタンツ)

池田新エネ推進協議会

受賞概要

池田市は大阪市の北部約15kmに位置する人口約10万人の都市である。空港や高速道路が通過する交通の要衝で、市内の国道は慢性的な渋滞が発生する一方、公共交通利用者の減少も見られる。また、大規模小売店舗の出店等もあり中心市街地の活性化も課題となっている。このような中、公共交通利用促進、低炭素地域づくりを目的としてMMを実施してきた。

平成20年度より事業所を対象としたMMを開始した。平成21年度には、市民への浸透を図るため、「楽しみながらライフスタイルに溶け込んだ取り組みに」をコンセプトに市民共同発電(太陽光発電)の導入資金確保を目的とした地元商店で使える地域通貨(iKeco)を立ちあげ、これと連携した啓発(地域通貨MM)を実施してきた。また、事業所MMにも「楽しみながら」のコンセプトを加える地域通貨MMとの連携や、事業所MMから転入者MMへ発展など、パッケージ展開を進めてきた。

これらの結果として、地域通貨MMでは約3割の市民が大型店舗から地元商店へ買物先を変更する意向を示すとともに、買い物時のクルマ利用が1割減少する効果が確認された。また、これらと市民共同発電の導入資金確保の効果をあわせ1石3鳥のCO2削減スキームが確立された。

MMのパッケージ展開では、地域通貨MMの導入などのコミュニケーションを通じて事業所担当者の意識も変容し、自主的な活動に繋がった。また、転入者MMでも約9割が転換意向を示すなど、様々なパッケージ展開により高い啓発効果が確認された。

MMと地域通貨の連携やパッケージ展開により、買物時の交通手段変更のみならず、地域の再発見や中心市街地利用客の増加などの効果を有機的に引き出すとともに、市民生活への浸透を図った。本取り組みは新しい環境基本計画にも位置づけられており、今後も「環境にやさしいまち・池田」にふさわしい、持続可能性、発展性のある取り組みとしていきたい。

JCOMM実行委員会から 地域通貨とMMを連動させることにより、クルマ利用の削減と中心市街地活性化を同時に達成しようとした意欲的な取り組みです。参加者が楽しく地域貢献できるということが特長になっており、フリーペーパーによる幅広い情報提供が効果を発揮しています。事業所MMや転入者MMとも連動しており、まちづくりという観点から今後さらに発展の期待できるMMプロジェクトとして、JCOMMプロジェクト賞に選定されました。

題目 広報おおたけ
受賞者

大竹市(市民生活部市民課、総務企画部企画財政課)

受賞概要

大竹市は、広島県西端に位置する人口約3万人の市である。沿岸部の公共交通は、山陽本線と3便/日の路線バスのみで、マイカーやタクシーに頼らざるを得ない状況にあった。高齢化の進展にくわえ、平地部が少ないため、昭和40年代から高台の住宅造成が行われてきた。数十年が経過し、これら高台団地の高齢化が事態をより深刻化させている。運転ができなくなった方、運転していた配偶者が入院された方など、日常生活に不便を感じる方が増えている。これら市民の移動を守り、市域の活性化を図るため、平成21年10月に市街地でのコミュニティバスと地域住民主導によるフィーダー交通の実証運行を開始した。

当市では、バス導入以前より市民自らが守る仕組みを形成・維持すること、また市民への周知活動を充実・継続することが極めて重要であると強く意識してきた。その一環として、市広報誌「広報おおたけ」において関連情報の提供を、運行約1年前の平成20年10月から、現在まで毎月欠かすことなく続けている。

市広報誌は、市内全世帯への配布、かつ毎月発行が約束された媒体であり、読み手を飽きさせない努力(コンテンツの工夫)が大変であるが、その分、市民への周知や意識・行動変容に大きな役割を果たすと考えている。なかでも平成21年12月号(バス特集号)では、「HAPPY BUS DAY」のキャッチコピーとケーキの写真といった遊び心や、市民インタビューなど、読者の興味を引く記事となるよう心掛け、その結果、多くの市民にバスを認知していただけたと考えている。

市広報誌等の利用促進策により、コミュニティバスの利用者数は伸び続け、平成21年度下半期が4.7人/便であったのに対して、平成22年度下半期は5.9人/便に増加している。今後も市民と共に利用促進に努め、10年後、20年後まで運行できるバスに育てていきたい。

JCOMM実行委員会から 制約のある市の広報をコミュニケーションツールとして活用し、30回に及ぶ長期間、広範囲に配布している点が「情報の出し方のデザイン」として高く評価されました。また、紙面デザインについても,幅広い層に向けて安定感のある構成となっている点、ならびに、実際に公共交通利用者が増加につながっている点も高く評価されています。他都市への応用可能性も高く、JCOMMデザイン賞に選定されました。

題目 広島市のノーマイカーデー運動支援WEBサイト『マイカー乗るまぁデーくらぶ』
受賞者

広島市道路交通局都市交通部

中村 良枝(株式会社福山コンサルタント)

金子 俊之(株式会社福山コンサルタント)

小笹 俊成(株式会社福山コンサルタント)

斎藤 詩織(株式会社福山コンサルタント)

受賞概要

広島市では、毎月2・12・22日を「マイカー乗るまぁデー」と定め、平成17年度より環境にやさしい交通行動の実践を促すノーマイカーデー運動を推進している。この取組の支援策の1つとして、クルマの利用を控えた取組報告がいつでもでき、その人の環境への貢献度が確認できる常設型のWEBサイト「マイカー乗るまぁデーくらぶ」を開設している。

このWEBサイトでは、クルマの代わりに徒歩や自転車、公共交通機関を利用するなど、環境にやさしい交通行動を実践したときの取組報告がいつでもでき、取組によるCO2削減量や消費カロリーがグラフなどで視覚的に表示されるなど、環境への貢献度が確認できるシステムとなっている。また、取組回数やイベント参加に応じて、オリジナルキャラクターが成長する仕掛けを導入しており、参加者が楽しみながら取組報告を継続できるように工夫している。さらに、企業内の環境意識向上に活用できる団体登録制の導入、普段クルマをあまり利用しない人でも環境にやさしい行動をチェックできるクイズの導入、参加型イベントの定期開催、携帯電話での取組報告への対応など、誰もが親しみやすいWEBサイトづくりを実践している。

WEBサイトを大規模かつ個別的なモビリティ・マネジメントの展開ツールとして活用し、アクセス頻度や滞在時間の増大により、個人の環境意識向上やフィードバック効果の持続が期待できる。また、団体登録制の導入により、企業単位でのCO2削減量や団体内ランキングが表示でき、環境意識向上や企業CSRへの活用が可能である(現在の登録会員数は3,165人、73団体)。

広島市総合交通戦略(平成22年7月)では、本サイトの登録会員による取組報告件数の増加を指標の1つとして位置づけており、今後も「マイカー乗るまぁデーくらぶ」を積極的に活用していくこととしている。

JCOMM実行委員会から

WEBによるモビリティ・マネジメントの効果をデザインの観点から高めることを意図した取り組みです。インパクトのあるキャラクターと「マイページ」におけるゲーム性の高いコンテンツは、「ノーマイカーデー」というキャンペーン施策に興味を持ってもらうために有効であると考えられ、その意匠性が高く評価されています。会員の取り組みの集計結果(成果)がリアルタイムで反映され視覚に訴える点も画期的であり、デザイン賞に選定されました。

■ 平成22年度

JCOMM実行委員会では、平成22年4月中旬までに、ご応募・ご推薦を頂いた取り組み・研究の中から、平成22年度JCOMM賞の各賞受賞者を選定いたしました。受賞者の方には、第五回JCOMMにて、表彰を行います。


題目 神戸におけるESTモデル事業
受賞者

神戸市TDM研究会、神戸市EST協議会、KOBEST2007実行委員会、

かしこいクルマの使い方を考えるプロジェクト神戸

受賞概要

神戸市郊外部におけるMMを中心とした環境行動計画が、国土交通省のESTモデル事業に選定されたことを踏まえ、郊外部の地下鉄沿線の事業所の従業員ならびに居住者を対象としてTFPを実施するとともに、公共交通の利便性向上策を出来る箇所から実施した。マイカー利用から公共交通への転換を図ることで、CO2排出量の削減と公共交通の利用者増を目的とするものである。職場MMは平成19年度から着手し、平成21年度までに5工業団地で約16,000人を対象としてTFPを実施した。また、最初にTFPを実施した西神工業団地では、エコ通勤を考える企業ミーティングを開催することで、工業団地一斉ノーマイカーデーを実施することになり、直通バスの新設や循環バスの増発等を合わせて行った。また、居住者MMは平成20年度から着手し、2団地で約10,000人を対象にTFPを実施し、併せてシンポジウムの開催やレンタサイクルの実験などを行った。他にも、公共交通を利便性向上策として、駅にバスビジョンを設けて案内し、全市のバスマップを作成し配布・掲示を行った。

平成19年度の職場MMについて、1年後に検証したところ地下鉄利用者やバス利用者が他の区間に比べて若干の増加(3~13%)が見られた。また、これまでのTFP結果より、従業員の約5割、住民の約8割が「クルマの利用を少しだけでも控えよう」と意識が変わるとともに、回答者のクルマの利用時間が約1割減少した。これまで実施してきたエコファミリー制度などの効果も含めると、ESTモデル事業でのCO2削減目標1,800tに対し、1,911tの削減効果が見込まれた。

TFPの実施によって「かしこいクルマの使い方」に対する意識が高まり、マイカー利用から公共交通への利用転換が確認できた。しかし、これらを水平展開するためには、財源や人材の不足が課題となってくる。これらの実績や課題を共通の認識とし、政策目標として掲げ、既存の組織の中で継続的に取り組んでいける仕組みが出来るよう、働きかけていくことが重要である。今回モデル事業として実施してきたこれらの取り組みが、好例として広く普及されることを望みたい。

JCOMM実行委員会から

大都市において長年MMに取り組まれ、PDCAサイクルの下、都市部から都市部周辺へと総合的かつ横断的に進められ、複合的な効果が得られています。様々主体が存在する中で各種MM推進委員会の構成員に共通メンバーを配することで取組の一貫性を確保するなど、持続可能な体制づくりにも工夫がなされ、また、エコファミリー制度など社会実験だけではなく、まちづくりの視点も絡めた行政施策として結実している点も高く評価できることから、JCOMMマネジメント賞に選定されました。


題目 松江3M(Matsue - Mobility - Management)-「ひと」「まち」「地球」の縁結び-
受賞者

松江市公共交通利用促進市民会議、

国土交通省(松江国道事務所調査設計課・島根運輸支局輸送課)、

島根県(交通対策課)、松江市(地域・交通政策課,都市計画課・交通局)、

一畑電車(株)、一畑バス(株)

受賞概要

松江都市圏のMMへの取り組みは、平成15年度に松江市公共交通利用促進市民会議の前身組織が、「自動車利用を抑制し、利便性が高く環境にも優しい公共交通機関へ転換するまちづくり」を提言したことから始まる。

提言を踏まえ、(1)松江市公共交通体系整備計画(平成18年度)の策定からMMや交通社会実験の実施まで取り組んでいること、(2)計画立案にあたり、関係者(特に市民)との協働に取り組む中で信頼関係を構築し、計画完成時にはこれを着実に実行する組織的な推進力を得ていること、(3)提言当初から都市計画との連動を視野に入れ、交通社会実験等を活用しながらまちづくりを実現するという明確なプログラムを有していることがマネジメント上の特長である。

一連の取り組みのうち、例えば、市内100社、3,200人の参加を得た「ノーマイカーウィーク」では、ピーク時に9%車が減ることで、CO2排出量や主要交差点の渋滞長合計が半減することを確認した。一畑電車を対象としたMMでは、マイカー通勤者の21%が一畑電車を利用し、その1/3は実際に通勤手段を変更するに至った。また、中心市街地でのトランジットモール実験では、普段は実験区間内を目的地毎にマイカー移動する人のうち38%が徒歩・自転車・バスで移動し、道路空間の再配分が交通行動の変化を促すことを確認するなど、目に見える成果を得ている。

市民会議が取り組んだ地域MMは、対象地域に「バス利用促進委員会」が組織されるなどの自発的な取り組みを誘発し、またこの様子が報道され、他地域へと派生するなど好循環も生まれている。平成22年度も既に塩見縄手で一方通行・歩道拡幅実験を行い、今秋には、ノーマイカーウィークや地域MMに加えてパーク&ライドやコミュニティサイクルにも取り組む予定である。

今後も、MM、交通社会実験を継続、拡充しながら、冒頭に紹介したまちづくりの実現へ取り組むこととしている。

JCOMM実行委員会から

毎年特定期間での社会実験を積み重ね、市民会議を中心とした拡がりをもちながら粘り強く平成15年から続けられている取り組みは、地方都市における素晴らしいマネジメント事例です。官民一体となって計画的かつ戦略的に進められ、交通事業者が率先して実行している点も評価できます。また、ソフト施策だけでなく、ハードとの連携も推進体制の中に組み込まれ、理想的な運営体制がつくられており、国、市、交通事業者、民間等の努力の結果、目に見える効果が現れており、今後の発展も期待できる地方都市の模範となる取り組みであることから、JCOMMマネジメント賞に選定されました。


題目 当別町地域公共交通活性化再生事業
受賞者

当別町地域公共交通活性化協議会、

(有)下段モータース、(社)北海道開発技術センター

受賞概要

平成18年度以前、北海道石狩郡当別町には、地域内の路線バスは2路線(青山線・当江線)しか存在せず、地域住民の生活交通は整備されているとは言えなかった。そこで、町内及び隣接する札幌市あいの里地区までを多目的に運行している民間の送迎バス(医療系大学の送迎バス・特定の地域住民バス・患者輸送バス)と自治体で運行するバスを一元管理することで、路線・ダイヤの合理化・効率化を図り、平成18年4月より、当別ふれあいバスの実証運行を開始した。これにより、単独で運行を行っていた時に比べ、民間事業者及び自治体の運行経費を圧縮するとともに、これまでの民間送迎バスでは利用可能な住民が限定(患者や学生等)されていたが、この一元管理により、不特定の住民が利用できる公共交通として運行することが可能となった。

また、モビリティ・マネジメントとしては、この事業の計画段階より、ニューズレター『とうべつバス通信』を発行し、検討の過程や調査結果について町民への周知を実施するとともにバスに関する取組みやMMに関連する情報を発信している。さらに、住民MM・学校MM・バス利用者感謝ツアー・バス祭り・交通マップ作成・交通すごろく作成・バス車内展示会等のMM施策を継続的・複合的に展開した結果、利用者数は増加傾向にある。

加えて、環境に配慮したバス交通を目指し、廃食用油から精製するバイオディーゼル燃料によりバス運行を実施するとともに、ふれあいバス車内・町内のスーパー・公共施設等で町民から廃食用油を回収するシステムを構築した。

今後もコミュニティバスの継続的な運行及び利用者拡大に向けて、様々なMMを実施し、地域に愛されるバスとして、守り、育てていきたいと考えている。

JCOMM実行委員会から

過疎地であっても工夫とやる気次第でバスモビリティの改善プロジェクトがここまで成功するということを示した好例であり、この事例を学ぶことで勇気付けられる地域の数ははかりしれません。イベントや関連する様々な工夫も豊かで、楽しく参加できるというMMの本質も体現しています。非常に完成度が高く、同時に更なる発展可能性も期待できる他に模範となるプロジェクトとしてJCOMMプロジェクト賞に選定されました。


題目 仙台市内及び近郊8大学交通情報マップ
受賞者

仙台市、仙台白百合女子大学、東北学院大学、東北工業大学、

東北生活文化大学、東北大学、宮城学院女子大学、宮城教育大学、宮城大学

受賞概要

「学都」と称される仙台には、人口約103万人の約5%を占める大学生がおり、短大生・専修学校生等を含めると、人口の約7%になる。その学生に公共交通の利用促進を広めることは、現在の公共交通利用者を増やすだけでなく、将来の公共交通利用者の増加にも繋がる。

そのため、仙台市では、市と大学が連携し交通手段や居住地選択において公共交通利用の意識を高めるため、各大学オリジナルの大学交通情報マップを作成し、新入生の入学手続き資料等に同封しており、各大学が継続的に取り組み始めている。

大学交通情報マップは、各大学の学生と教職員、行政、NPO等とワークショップを行い、労力と時間をかけて、大学オリジナルのものを作成しており、新入生に公共交通を利用してもらえるように工夫している。下記に各大学の交通情報マップの特徴をまとめる。

【デザインの特徴】

・スクールーカラーを基調としていたり、パステルカラーを採用することでさわやかさ、女子大らしさをイメージさせている。

・手書きのイラストでやわらかさを伝え、芸術性を高めている。

・キャラクターを掲載することで、見た人に親近感を持たせている。

【掲載情報の特徴】

・バスの路線図だけでなく、ランドマークとしての主要施設、コンビニ・スーパー等の生活に必要な情報を掲載

・大学入学により新たに仙台で生活を始める新入生のために、大学生協を通して契約したアパート等の物件数を地区毎に掲載

・車の利用を控えることによるCO2の削減量等の環境に関する情報を掲載

・単に目的地まで待つだけであったバス車内での移動時間に「楽しみ」を提案するため、バス車内でのエクササイズや過ごし方等についての情報を掲載

JCOMM実行委員会から

応募されたMMツールは、複数の大学の学生教職員をターゲットとしたバスマップであり、それぞれの大学の学生が中心となって、行政やデザイナーが関与するワークショップを通じて大学毎に作成されるとともに、各大学が主体となってそれぞれの大学構成員に配布しています。それぞれのバスマップの機能性・有用性が全体に秀逸であり、また、ワークショップや発表会などを通して利用者の視点を取り入れる工夫を凝らしている点の実務的可能性が高く評価され、JCOMMデザイン賞に選定されました。


題目 熊本電鉄の利用促進のための一連のMM施策とその有効性の評価
受賞者

受賞研究業績=溝上章志、橋本淳也、末成浩嗣:利用実態調査による利用促進を目的としたMM施策の有効性評価、土木学会論文集, 66 (2), pp. 147-159, 2010他

溝上章志、橋本淳也、橋内次郎、末成浩嗣

受賞概要

公共交通機関の利用促進を目的としたMMの代表的技術の一つであるTFPの有効性を評価する方法としては、自動車利用の削減量などの行動変更に関する事後アンケート調査へのTFP参加者の回答値に分散分析などを適用し、効果の有無の統計的検定を行うのが一般的であった。しかし、できれば、TFP参加者がどの程度の行動変更を行ったかを実測し、TFPの真の効果を実際の行動データから計測したい。また、実際に行動変更を行っているのは、当初のTFP参加者のうちのどのようなセグメントであるかも明らかにしたい。

本研究では、熊本電鉄線への転換促進を目的としたオブジェクト指向のTFPを沿線自治体で大規模、かつWave-4まで継続的に行い、以下のようなことを明らかにした。

 1) 実行転換率と長期転換維持率に与える自動車利用抑制要因の程度や転換行動意図の強弱、行動プラン票の記入の有無の因子効果は大きいこと、CO2排出量などの改善情報のフィードバックは長期的な転換行動を維持するのに効果があることなどが改めて検証された。

 2) TFPに参加したことによって実際に交通手段を自動車から熊電に転換した利用者を「熊本電鉄利用実態調査」で補足し、彼らの属性やサービス水準の分布を分析することによって、TFP回答値と実際の行動の間に一致性があることを検証した。これによって、TFP被験者の回答値の信頼性は担保されることが分かった。

 3) この結果より、回答値を用いた転換行動モデルや実行率モデルを推定し、TFP実施によって自動車から公共交通機関に転換しやすい世帯や個人のセグメントを抽出した。世帯としては、自動車保有台数が小さく、買物・習い事に公共交通機関を利用可能な構成員がいる世帯、個人としては、現在の自動車による目的地までの経路に対して、最寄り駅までの徒歩時間や乗り換え回数が小さい公共交通機関経路がある年齢階層の高い個人ほど、TFPによる転換可能性が高いことが明らかになった。

JCOMM実行委員会から

本研究で提案されているモビリティマネジメントの効果の評価・検証技術は従前からの課題を解決するものといえます。特に地方都市のLRT事業計画において実施した大規模TFPの有用性をパネル分析と事後実態調査により3年間をかけて検証した内容は、学術・実務の両面での貢献が非常に大きいものと評価されました。こうした研究業績は技術賞に相応しいものであると評価されたことから、JCOMM技術賞に選定されました。

■ 平成21年度

JCOMM実行委員会では、平成21年4月中旬までに、ご応募・ご推薦を頂いた取り組み・研究の中から、平成21年度JCOMM賞の各賞受賞者を選定いたしました。受賞者の方には、第四回JCOMMにて、表彰を行います。


題目

倉敷・水島コンビナート・エコ通勤実証実験の取り組み

~大規模事業所8社を対象としたエコ通勤に向けた取り組み~

受賞者

水島コンビナート・エコ通勤検討協議会事務局

(倉敷市建設局都市計画部交通政策課・(株)オリエンタルコンサルタンツ)

受賞概要

本プロジェクトでは、倉敷市南部に位置する水島コンビナートにおいて、エコ通勤実証実験を行い、今後の職場交通マネジメントの在り方について検討を行った。公共交通が不便なため自動車通勤者が多く、地域の公共交通利用者は減少の一途であることから、バス路線の減便・廃止が拡大しており、また、地元商店街の衰退も深刻な状況である。

平成20年11月に約2週間、主要企業8社の従業員を対象にエコ通勤実証実験を行った。実験では最寄り駅と企業を結ぶシャトルバス運行、レンタサイクルや、「できることからできるペースで」のコンセプトで各企業が独自の取組みも行った。また、バスマップや啓発冊子等のツールの配布に加え、TFPアンケートや商店街活性化を狙った施策も展開した。

実験では、ターゲットとした日勤者の約3割が参加、シャトルバス利用者が1日平均約100人、相乗りや自転車通勤等を含めると1日平均約220人がエコ通勤し、約500kg-CO2を削減できた。また、公共交通機関等が運行していない時間帯に勤務しなければならない交代勤務者は、当初エコ通勤が難しいと考えられたが、自転車を利用するなど自発的参加も見られた。従業員の満足度は概ね高く、代替交通手段があればエコ通勤を実施する意思を示すとともに、実験後に他地域の取組状況について、視察を検討する企業が出るなど、企業担当者の意識・行動変容を促進した。

実験により、本地域でもエコ通勤の展開可能性が確認できたほか、企業や地域の意識に変化を与えた効果は大きく、各企業や地域がそれぞれの実情に応じ、自主的に取組む雰囲気が芽生えた。今後は、協議会等のネットワークを活かしつつ、地域にエコ通勤を根付かせていくことが重要である。

JCOMM実行委員会から

「エコ通勤」として大規模工場地帯におけるそれぞれに考えの異なる多様な企業群を地道なコミュニケーションを通じて広く取り込む一方、きめ細やかな対応を通じて完成度の高い効果的なプロジェクトを遂行している点が高く評価されました。また、取り組みを通じて公共交通利用者の増加や新たな地域づくりの芽もうまれており、応用可能性にも富んだエコ通勤の規範的な取り組みとして、JCOMMプロジェクト賞に選定されました。


題目

大学生による富士市特定バス路線の利用促進策とその効果分析

受賞者

南山大学石川研究室・富士市役所都市計画課

受賞概要

静岡県富士市では、市街地中心部における地域住民の交通利便性の向上とバス離れを食い止める策として、JR富士駅を起点とする循環バス「ひまわりバス」を運行している。しかしながら、その利用者数は低迷しており、効果的な利用促進策が望まれていた。

そこで、本プロジェクトでは、市街地循環バスの利用促進のため、新たなMMツールとプロジェクトを開発し、その効果をwith-without比較が可能なバス利用者推計モデルとアンケート調査により計測した。本プロジェクトでは、南山大学石川研究室の学生がプロジェクトチームを編成し、富士市役所都市計画課の協力を得て、プロジェクトの企画、運営、効果分析まで実施した。新たな情報提供ツールとしてフリーペーパー(無料交通情報誌)を作成し、沿線全域の地域住民への情報提供を行うとともに、利用促進イベント及び絵画コンテストによって、より深く地域住民に対する意識啓発を行った。また、利用実態を考慮して、医療施設、商業施設に、最寄りのバス停の時刻表等を記載したオーダーメイド型の時刻表ポスターを掲示し、バス利用の利便性向上を図った。

本プロジェクトの実施により、実施後4ヶ月間で約1,400人、約8%増加の効果が得られた。また、大学生がプロジェクトの企画から、イベント運営、その他各種MMツールの作成、効果分析まで全てを行っており、教育効果も高く費用対効果の高いプロジェクトであった。

JCOMM実行委員会から

バスの利用促進をはかるため、交通計画の素人といえる大学3年生のグループが主体となって企画・デザイン・実施を行った取り組みで、フリーペーパー、グッズ、時刻表、イベントなどの各要素がいずれも手作り感あふれる様々な工夫で満載されている点が高く評価されました。一方で効果計測もきちんと考慮されており、MMが本来持つ楽しさが豊かに伝わる取り組みとして、JCOMMプロジェクト賞に選定されました。


題目

名チャリマップおよび名チャリVI

受賞者

名チャリプロジェクトチーム(牧野 暁世、橋口 萌、堀田 智世、小沢 千晴)

受賞概要

「名チャリ」とは、名古屋市内で撤去された放置自転車を再使用したコミュニティサイクルの愛称である。名古屋市中心部で「名チャリ」を導入することで、CO2排出量の削減、放置自転車の削減、回遊性の向上が期待できる。名古屋大学大学院名チャリプロジェクトチームは、数年にわたって名チャリの導入可能性を調査・研究しており、これまでに社会実験を2度実施してきた。平成20年度社会実験は9月21~23日に実施され(21日は雨天中止)、2日間で約950回の貸出を記録した。

名古屋独自の新公共交通を目標とする名チャリには、地域主体とのパートナーシップが不可欠である。名チャリマップおよび名チャリVI(ロゴマーク、映像、コンセプトイラスト、概要版)は、名チャリの周知と名チャリが持つ理念の理解を市民に促すことを目的として作成された。名チャリマップは、名チャリの利便性向上や適正利用の促進を目的とし、名チャリステーションや既存の公共交通機関の情報等を盛り込みながら、携帯性を重視して作成された。名チャリVIは、平成20年度社会実験を経て、多くの市民が名チャリの本格的実施に賛同していることが明らかになったため、公共交通としてあるべき「信頼」、「安心」といったイメージを視覚化するために整備された。これら一連の制作は、名チャリブランド構築の第一歩と考えており、今後も様々な展開が期待される。

JCOMM実行委員会から

ネットワーク型のレンタサイクルの認知度を高め、利用促進を図るため、自転車マップ、チラシ、ポスターなど多様なツールに、統一されたロゴマーク、デザインが使用されており、「ブランディング」に熱心に取り組む姿勢が高く評価されました。また、新しいロゴマーク・関連イラストの意匠性についても高く評価され、JCOMMデザイン賞に選定されました。


題目

「バスマップ沖縄」紙版マップ及びWebサイト

受賞者

谷田貝哲・気候アクションセンターおきなわ

受賞概要

「バスマップ沖縄」では、バスの実際の利便性と、世間の低評価とのズレの原因が「バスの利用情報がわかりにくく、しかも入手しにくい現状」にあると捉え、バスの利用情報を記したマップを配布することでバスを常用しない人々がバスに気づき、バスを知るきっかけを作ることを狙っている。

作成に際しては、「正確な情報を必要最小限」扱うことを心がけた。表紙や全体のイメージはヨーロッパの同種のマップに範を取り、極力「バスっぽさ」を抑えた、シンプルで主義主張のないデザインを目指した。沖縄特有の難読地名も(特に旅行者の)バス利用を妨げる遠因と考え、停留所の読み方を記したり、ピクトグラムを使用して表現の一般化を図ったりしている。

紙のマップへの記載情報を絞った反面、Web上では路線別案内等の詳細な情報も扱い、ダイヤ改正等にも随時対応している。観光客の過半数が、レンタカー付きプランを出発地で予約してから来沖しているため、沖縄県外で沖縄のバス情報を得られるようにすることも、Webサイトの大きな目的である。

取り組みの結果、バスマップを入手した県民の約半数が、「バスマップ入手後,実際にクルマの代わりにバスで外出したことがある」としたほか、日常的なバスやクルマの利用頻度が変化した人も1~2割前後いるなど、交通行動の変容に一定の効果がみられた。

今後も引き続き、外国語版バスマップの発行やWebでの時刻検索等、情報面からのバスの利用促進に取り組んでいきたい。

JCOMM実行委員会から

バスマップは、必要な情報をシンプルかつ十分に盛り込んだ機能的なツールに仕上がっており、特に、路線図を模式的ではなく地図上に記載しており土地勘が無い外来者でも分かり易い点、難読地名の読み方を記載するなど、きめ細かな配慮がなされている点が高く評価されました。バスマップに掲載できない時刻表などをWEBにまとめており、両媒体の長所と短所を活かした情報システムになっており、その高い機能性が高く評価され、デザイン賞に選定されました。


題目

先進的オンデマンドバスシステムの開発と評価

受賞者

(受賞研究業績=坪内孝太、大和裕幸、稗方和夫:過疎地における時間指定の出来る

オンデマンドバスシステムの効果、日本ロボット学会誌Vo.27, No.1, pp.115-121, 2009他)

坪内孝太、大和裕幸、杉本千佳、稗方和夫、下村淳一、吉富広三

受賞概要

オンデマンドバスとは利用者の予約に応じて弾力的経路を組み、乗り合いを生じながら動く新しい公共交通機関である。本研究で開発したオンデマンドバス予約システムは、独自に開発したスケジューリングアルゴリズムにより、①利用者が到着時刻を指定できる、②約束した到着時間を保証できる特長を有している。既存のシステムの場合、オペレータが人手で経路計算を行うため、利用者は必ずオペレータに電話しなければならない。本システムは、コンピュータが自動的に運行計画を更新し自動的に車両に搭載されている車載器に最新の運行計画が伝達される仕組みのため、オペレータを介さずに利用者自身がパソコンや携帯電話から簡単に予約できる。ソフトもサーバーもSaaS (Software as a Service)形式でネットワークを通じて提供され、システムの導入および管理コストを革新的に安価にできる。

基本システムを企業と共同で作り上げ、サーバーも商用サービスとしての展開を始めている。3地域が2009年度に実用化を行う予定である。自治体担当者が容易にサービスの導入設計ができるよう、①交通設計シミュレータの開発、②自治体担当者向けの意匠性の高いパンフレットを作成するなどシステムの普及も積極的に行っている。また、当該オンデマンドバス技術は海外のシステムと比較しても新規性があり、来年度には英国にて実証実験を計画し、予算措置も得ている。

JCOMM実行委員会から

この研究で開発されている「オンデマンドバス予約システム」は、到着時刻を保証できるシステムであり、既存のデマンドバスシステムでは対応することが難しかった通勤や電車への乗り継ぎ、医療機関の予約などの時間的制約の強い利用目的の異動にも対応できることから、オンデマンドバスの利便性を飛躍的に向上させるものであると高く評価されました。適切なソフト施策と融合することで地域のモビリティの質的改善が大きく見込める画期的な技術開発であることから、JCOMM技術賞に選定されました。

■ 平成20年度

JCOMM実行委員会では、平成20年4月中旬までに、ご応募・ご推薦を頂いた取り組み・研究の中から、平成20年度JCOMM賞の各賞受賞者を選定いたしました。受賞者の方には、第三回JCOMMにて、表彰を行いました。


題目

福山都市圏におけるベスト運動を核としたモビリティ・マネジメント

-交通円滑化総合計画を活かした5年間に渡る包括的な取り組み-

受賞者

福山都市圏交通円滑化総合計画推進委員会事務局

(国土交通省中国地方整備局福山河川国道事務所調査設計第二課・広島県福山地域事務所建設局事業調整班・福山市建設局都市部都市交通課・福山コンサルタント西日本事業部)

受賞概要

福山都市圏のMMの取り組みは、福山市・府中市・尾道市・笠岡市・井原市からなる人口約70万人の圏域を対象に、地域の渋滞緩和・地球温暖化防止を目的とし、主体施策としての「ベスト運動」とその他定着支援施策群との連携により、都市圏全体にMMの考え方を導入して取り組んできた。

「ベスト運動」は、持続可能な仕組みとするため、パソコン・携帯電話の情報通信機能を活用した会員登録制のTFPであり、会員からのメールによる参加報告を毎月集計し、渋滞損失・CO2削減量の効果をフィードバックしている。会員募集活動として、企業へのアプローチは述べ2,500社以上を行い、現在の協賛企業は130社、会員数は11,000人を越え、市民に認知・定着している。

また、「ベスト運動」を支える支援施策として“人々の意識変化を促す”ための「小学校TFP」、「企業・居住地TFP」、「交通フォーラム」や、“参加しやすい環境づくり”として「中心部レンタサイクル」、「交通情報提供システム」などに取り組んできた。

道路改築、交差点改良などのハード施策とMM活動により、交通円滑化総合計画の目標であるピーク時所要時間の短縮は約9割達成され、これにより、渋滞損失時間を12%、CO2排出量を5%削減する効果を確認した。また,計画達成へのMM寄与度は約3割(渋滞損失時間の場合)と十分高いことから、「ベスト運動」を核とした仕組みは、2008年度(平成20年度)以降の円滑化総合計画においても、継続実施されることとなった。

JCOMM実行委員会から

明確な目標の下、ベスト運動を核として持続可能なプラットフォームが整備された中、多様な主体に多様なアプローチで働きかけ、着実に参加者や協賛企業の増加と定着がなされています。その結果、環境問題や渋滞問題への貢献が顕著に現れており、費用対効果が7以上という成果が得られています。広域での運動体制が確立している点が先進的で、かつ、効果等を定量的に把握しつつ持続的なマネジメントを展開している点が高く評価できることから、JCOMMマネジメント賞に選定されました。


題目

筑波大学新学内バス導入と利用促進MMプロジェクト

受賞者

筑波大学

受賞概要

本プロジェクトでは、全国初の大口特約一括定期により、国内の大学では類を見ない便利で安価な学内バスシステムを導入した。このバス導入により、(1)学内バス運営に関する経費節減、(2)自動車利用の削減による環境負荷の低減、(3)自家用車を使えない人々に対する移動に関する公平性の確保、という効果が確認されている。

またその利用促進として、「動機付け・利用証利用例・購入方法・購入申込書・携帯可能なバス時刻表」を1枚にまとめたチラシとつくば市内のバスマップを組み合わせた大学バス利用促進MMキットを作成し、大学組織を介して学生・教職員(総計9,731人)に配布した。

このバスシステム導入とMMにより、教職員の通勤におけるバス分担率が2倍となる等、バス定期券の購入及びバス利用を促進する効果が確認されている。この効果を環境負荷に換算すると、通勤・通学交通におけるCO2排出量が全学で約12%削減されたとの試算(筑波大学都市交通研究室)が報告されている。

一方で、バス路線や時刻表は頻繁に変更されるため、有効期間は短く、利用者の立場からは継続的な発行体制が不可欠である。本プロジェクトでは、バス路線・ダイヤの変更に対応して、チラシは3回、バスマップは5回の改良を加えて、毎年度春の利用証購入時期に併せて配布を継続的に行っており、今後も財源を模索しつつ、継続的に発行していく予定である。

JCOMM実行委員会から

利便性が高く、かつ、利用者の経済負担の小さいバスシステムを導入すると共に、効果的なコミュニケーション施策を展開することによって、筑波大学という大規模な事業所における通勤自動車分担率の二割程度の削減とバスの大幅な利用促進に成功しています。ハードとソフトの組み合わせによる自動車から公共交通へのモーダルシフトの達成は、モビリティ・マネジメントにおける一つの理想的なプロジェクトであるとも言えるものであることから、JCOMMプロジェクト賞に選定されました。


題目

別所線の利用促進と沿線の観光振興を目的とした観光型モビリティ・マネジメント

受賞者

長野県上田市における観光資源を活用した別所線の活性化方策に関するワーキンググループ

(国土交通省北陸信越運輸局・上田市・エヌシーイー(株)・上田電鉄(株)・別所温泉観光協会・別所温泉旅館組合・別所線の将来を考える会・高瀬達夫(信州大学))

受賞概要

別所線は、長野県上田市の上田駅から別所温泉駅までを結ぶ全長11.6キロメートルの上田電鉄の鉄道路線である。長野新幹線及びしなの鉄道の駅でもある上田駅を起点とし、終点駅には、「信州の鎌倉」と呼ばれる風光明媚な観光地である別所温泉があることから、同地を訪れる観光客の移動手段としても活用されている。

しかしながら、全体の利用者数については、長期的には減少傾向にあり、別所線を地域の公共交通として存続させるためには、その利用促進が大きな課題となっている。特に、観光客による利用については、今後も増加が期待できることから、観光客による別所線利用を促進するための効果的な取組みが求められている。

こうした状況に対応するため、鉄道事業者、旅館、観光協会、行政等の関係者の協力のもと、沿線の観光資源を最大限に活かし、観光客による別所線利用を促進することを目的としたモビリティ・マネジメントを実施した。具体的には,別所温泉を訪れた観光客を対象に、3回のコミュニケーションによるTFPの実施を通じて、別所線の利用によって周辺の観光資源がより生きる魅力的な観光の提案や公共交通を利用した観光の意義の説明を行い、観光客の観光行動を、自動車利用を前提としたものから別所線等の公共交通利用も選択肢としたものへと変容させることを企図した。

その結果,観光客を対象としたTFPに関して、一定の行動変容の効果を確認することができたとともに、プロジェクトの実施を通じて、観光客を対象としたモビリティ・マネジメントを実施する際のツールの作成や関係者の連携のあり方の一例を示すことができた。

JCOMM実行委員会から

観光交通に起因する渋滞や温暖化ガスの増加などの各種の問題を緩和することを意図した「観光型モビリティ・マネジメント」の推進は、これまでのモビリティ・マネジメントの展開に於いて十分に取り組まれてこなかった重要な課題の一つとなっていました。今回の取り組みはこの点に着目し、観光地におけるマイカー利用の抑制と公共交通利用の促進を図るとともに、公共交通を活用した観光メニューによる観光地の魅力向上を目指した点に高い新規性が認められることから、JCOMMプロジェクト賞に選定されました。


題目

免許更新時講習等を活用したモビリティ・マネジメントの取組とその効果

受賞者

京都都市圏CO2排出削減広報検討会議

(事務局:国土交通省京都国道事務所調査課・京都府建設交通部交通対策課・中央復建コンサルタンツ(株)計画系グループ)

受賞概要

京都議定書の目標達成に向け喫緊の課題となっている自動車からのCO2排出削減を目的として、京都府下約150万人の免許保有者が少なくとも5年に1度は必ず受講する「免許更新時講習」の機会を活用したモビリティ・マネジメントの取組と効果計測を行った。

具体的には、従来は交通事故統計のみを提供していた講習資料に、不要不急の自動車利用を見直す「かしこいクルマの使い方」や「エコドライブ」の情報を追加した。形式は従来のA5サイズ×8ページの冊子形式からA1サイズの一枚物に変更して、表面はA5×16ページを使った情報提供面、裏面は死亡事故発生箇所や渋滞情報などの入った「ロードマップ」を掲載する地図面とした。「ロードマップ」にはドライブに役立つ観光施設や道の駅の情報を掲載することによって,受講者が手元に残して機会のある度に閲覧する気になるような工夫を行った。

本資料を平成19年9月から平成20年3月までの期間に講習を受講された約22万人の人々に配布した。平成19年12月に資料の効果を検証するためのアンケート調査を行った結果、自動車からのCO2排出量を年間約5,700t-CO2/年(上限値:約10,400t-CO2/年、下限値:約1,020t-CO2/年)削減する効果が確認された。あわせて、約8割の方から資料について「参考になった」との評価を得た。なお、本取組については平成20年度も継続して実施されている。

JCOMM実行委員会から

地域内のドライバー全員に「かしこいクルマの使い方」を呼びかける大規模コミュニケーションの展開は、モビリティ・マネジメントの推進に於いて最も重要な課題の一つとなっています。その中でこの取り組みは、自治体と国、ならびに警察が連携しつつ、当該地域の全てのドライバーに定期的に訪れる「免許更新時講習の機会」においてMMコミュニケーションを図るものです。この取り組みは全ドライバーに必ずメッセージを届けることが出来るという点に於いて当該地域のモビリティに大きな影響を持続的に及ぼしうる可能性を持つものであり、かつ、そのアイディアは他地域の模範と成りうる高い新規性を持つものであることから、JCOMMプロジェクト賞に選定されました。


題目

ふくいのりのりマップをはじめとするホジロバ交通情報関連ツール一式

受賞者

特定非営利活動法人ふくい路面電車とまちづくりの会(ROBA)

受賞概要

歩行者・自転車・路面電車・バスなど、環境にやさしい公共交通手段(ホジロバ交通)に関する情報を、「家を出るまえから帰宅するまで」の連続した行動として総合的にとらえてデザインすることで、車に頼りがちな行動をも変えられると考え、一連のホジロバ交通情報関連ツールを作成し、提供している。

バス電車マップ「のりのりマップ」は、最も基本となるホジロバ(歩自路バ)マップとして、地名や施設による位置情報、移動距離などが容易に確認できるよう、都市基本図をベースとして作成した。また、姉妹版の歩行者・自転車マップ「りんりんマップ」を作成し、併せて持ち歩きやすいようにデザインした。「のりのりマップmini」は無料配布用の手折り廉価版で、県内小中学校の社外活動を支援する総合学習用教材、高校新入生バス電車通学定期購入時の案内資料、転入者へのクルマ購入までの公共交通案内資料として使用している。また、時刻表は、WEB版の「ばすでんしゃねっと・ふくい」でマップをベースに全ての路線別の最新時刻表を提供するとともに、各地域と交通ターミナルを結ぶ全ての交通手段を統合した平日休日別の往復時刻表「地域時刻表」を提供し、プリントアウトして持ち歩けるようにしている。

「協働による公共交通とまちづくりのすすめ」は,市民に日常の生活行動を見直し公共交通の利用を促すための公共交通まちづくりガイドブックで、ホジロバまちづくりキャラバンの資料として活用している。

JCOMM実行委員会から

限られたスペースにバスの始終発時刻や運行間隔等のサービスレベル情報をコンパクトにまとめている点と、携帯性や作成費を考慮しつつ、路線図の大きさや綴じ方等について改善を加え続けながら継続した取組として一連のバスマップを作成している点が高く評価され、JCOMMデザイン賞に選定されました。


題目

茨城県内高校新入生のための公共交通利用促進パンフレット

受賞者

茨城県公共交通活性化会議・斎藤 綾

受賞概要

茨城県は自動車の交通機関分担率が9割を超え、様々な問題が顕在化している。このような中、県が平成19年3月に策定した茨城県公共交通活性化指針に基づき、茨城県公共交通活性化会議は、県内高校の新入生を対象に「公共交通を利用した通学方法について考えてもらう」リーフレットの制作と配布を行った。

高校生は、茨城県内の公共交通機関の重要な顧客であるが、地域公共交通が危機的状況にある茨城県においては、高校生の通学手段も公共交通から自家用車の送迎、バイク、自転車などに転換しつつあるのが現状である。

この状況を鑑み、新たな交通行動の「習慣」をつける絶好の機会である入学の時期に「公共交通を利用した通学方法について考えてもらう」リーフレットの配布を通じて、平成20年度の県内高校の新入生・保護者の通学時の公共交通利用の意識醸成を図るためのプロジェクトを実施した。リーフレットの内容は、「公共交通は環境に優しい」「利用者減の公共交通を維持するには多くの利用が必要」等をわかりやすく説明したうえで、「公共交通を利用した通学」を呼びかけるものとなっている。

配布は,県内の高校128校の新入生約3万人に新入生説明会や入学式において各学校を介して行っており、県立高校(全日制・定時制・専攻科)104校、私立高校(全日制・専攻科)23校、国立高等専門学校1校に配布することが出来た。この効果を把握するため、現在、各高校の1年生と2年生を対象に、交通手段に関する意識と行動のアンケート調査を行っているところである。

JCOMM実行委員会から

通学行動が習慣化されていない高校入学時に新入生を対象として配布することにより動機付け効果を高めるとともに、入学時に受け取る大量の配布物の中に混じっても手に取って情報を読んでもらえるような、くりぬき窓のついた表紙・裏表紙や1頁が正方形となる蛇腹折りの採用といった印象的な意匠が高く評価され、JCOMMデザイン賞に選定されました。


題目

WebGISを活用した交通行動自己診断システムの開発とトラベル・フィードバック・プログラムへの適用

受賞者

(受賞研究業績=大森 宣暁・中里 盛道・青野 貞康・円山 琢也・原田 昇:WebGISを活用した交通行動自己診断システムの開発とトラベル・フィードバック・プログラムへの適用、土木学会論文集D,vol.64,No.1,pp.55-64,2008.他)

大森 宣暁・原田 昇・青野 貞康・中里 盛道

受賞概要

開発した技術Internet-based Simulation Model for Activity Planning (iSMAP)のコンセプトは、1970年代にオックスフォード大学で開発されたHouseholdActivity-Travel Simulator (HATS)を、GISおよびWeb上で実現するものである。具体的には、個人の一日あるいは複数日の実際の活動パターンデータを収集し、活動パターンに関わる様々な指標(移動時間・費用、CO2排出量、カロリー消費量等)とともに地図上にわかりやすく表示し、また複数の代替活動パターン(交通手段の変更等)を生成・表示し、比較・検討できるシステムである。本システム利用者は、Web上で自身の毎日の交通行動を自己診断し、代替案を比較・検討できることから、より環境負荷の小さな、あるいは健康に良い活動パターンを、視覚的また具体的に認識することが可能である。Webベースであることから、従来の紙媒体を用いたTFPにおけるデータ収集・分析・評価・アドバイス等の各段階での人的・時間的・金銭的コストも節約できる。また、近年Webを活用したTFPの事例も見られるが、GPS携帯電話を活用した詳細な行動データも活用して、代替活動パターンを自動的に生成し、GISを活用して具体的な代替案を表示・比較・検討できるシステムは存在せず、TFPのコミュニケーションツールとして非常に有用で独自性および新規性の高い技術である。

JCOMM実行委員会から

WEBを活用したTFPには様々な可能性が存在することがかねてより期待されていたものの、その技術開発は十分に進展していなかったという問題がありました。そうした中、この研究は、種々の技術的課題を克服するものであり、そうしたかねてからの期待に大いに応えるものでありました。そして,実証研究からもその有用性が改めて確認されており、今後のMMの実務展開に大いに資することが期待される技術提案がなされているものと考えられます。こうした点が評価され、本業績は、JCOMM技術賞に選定されました。

■ 平成19年度

JCOMM実行委員会では、平成19年3月末までに、ご応募・ご推薦を頂いた取り組み・研究の中から、平成19年度JCOMM賞の各賞受賞者を選定いたしました。受賞者の方には、第二回JCOMMにて、表彰を行いました。


題目

かしこいクルマの使い方を考えるプロジェクト京都

受賞者

京都府

受賞概要

近年の自動車利用増大の要因は、私たち自身のライフスタイルの変化や都市構造の変化、そして家庭に自動車が行き渡り、クルマがあるからと、ついつい使ってしまう意識などによるものです。そこで、京都府では、京都議定書誕生の地として、京都都市圏を中心に環境的に持続可能な豊かな交通・環境づくりを目指し、①都市圏として交通を考え、②出来るだけ多くの府民・企業・学校・NPOなどと一緒に、③モビリティ・マネジメント(以下MMという)などコミュニケーションを中心としたソフト施策を行う、「かしこいクルマの使い方を考えるプロジェクト京都」を実施しています。

企業との施策では、17年度から宇治地域通勤交通社会実験として、通勤者5,000名に実施したTFPでは、鉄道利用者が大きく増え、自動車利用が減少。また、18年度にモニタリングした結果、その効果が継続していることも確認されました。

さらに、女性団体・老人会・自治会と連携して「お出かけマップ」を作成し、地域に配布する居住者向けMMを6市町で実施し、地域のバス利用者が増加しています、久御山町内の全小学校ではバスをテーマにした授業を展開するなど、企業・地域・学校と連携して、都市圏全域でMMに取り組んでいます。

JCOMM実行委員会から

H16年度から持続的な運営がなされ、MM専任の職員を配置すると共に、MMに関わる基本計画を整備し、多様な組織と連携を図りつつMM推進体制を築いた点が高く評価されました。現在、10市町村にまで取り組みが拡がり、また、住民、職場、学校など多様な主体にコミュニケーションを実施し、MMの持続的・効果的な展開の見本となる取り組みとしてJCOMMマネジメント賞に選定されました。


題目

大分市を中心とする地域における公共交通転換可能性調査事業

受賞者

公共交通機関利用促進対策事業調査実施委員会

(大分バス(株)・大分交通(株)・(社)大分県バス協会・大分県企画振興部総合交通対策課・大分市都市計画課都市交通対策課・藤井聡(東京工業大学大学院)・(株)ケーシーエス九州支社)

受賞概要

大分市内には約三百系統と多くのバス系統が運行されている上、系統に付された番号の体系が会社毎に異なり、また、事業者共通のバス路線図が存在しないなど、利用者にとって分かりにくいものとなっていた。このため、①利用者向けの情報提供の改善と②適度なインセンティブを組み合わせた大規模なコミュニケーションを併せて講じることによるバスの利用促進を目的に、NEDOの補助を受けて実験を行った。

具体的には、各運行系統にアルファベットと数字を組み合わせた事業者共通のルールに基づく系統番号を設定し、車両の行先表示器やバス停掲示の中心部路線図(新規に作成)と時刻表に表示した。また、説得情報が記載されたバス路線図を大分市内全世帯(約19万世帯)に市報とともに配布するとともに、市役所の転入届受付窓口でも配布した。

この結果、運送収入の減少トレンドの緩和効果が年間約5千万円と推計された他、プロジェクトライフ4年と設定した場合の省エネルギー効果及び二酸化炭素削減効果の総事業費に対するB/Cは3.55と推計された。

また、広告収入によるバス路線図の継続発行が可能との知見が得られたため、平成19年6月より、地元酒造会社(八鹿酒造(株))をメインスポンサー、バス業界の編著、印刷会社(佐伯印刷(株))発行、行政(県・市)が配布や広報に協力、との体制で、毎年約10万部を発行し、市役所の転入届受付窓口やバス車内等で継続配布することとなった。

JCOMM実行委員会から

系統番号の変更といったバスの基礎的な情報提供改善と合わせ、マップの市域全戸配布、転入者・通勤者MMという幅広いMMに取り組み、市域全体のバス利用者増をもたらしています。また費用便益分析を体系的に行い、単年度の取り組みにも関わらず費用便益比3.55という大きな効果を得たことを明らかにしている点も特徴です。今後のMM施策の手本となる取り組みとして高く評価され、JCOMMマネジメント賞に選定されました。


題目

福岡における『かしこいクルマの使い方』を考えるプログラム情報グッズ群

受賞者

小椎尾 優(前国土交通省九州地方整備局福岡国道事務所・現国土交通省九州地方整備局道路部)、中村 俊之・北村 清洲・須永 大介・牧村 和彦((財)計量計画研究所)

受賞概要

福岡における「かしこいクルマの使い方」を考えるプログラムでは、対象者一人ひとりのニーズに的確に応えられるグッズ群(以下MMグッズ)を作成し、地球温暖化問題をはじめ、福岡都心での交通問題の解消を目的にMMのデザイン開発を行った。

MMグッズには、①「『かしこいクルマの使い方』を考えるためのグッズ」、②「『かしこくクルマを使う』ためのグッズ」、③「プログラム関連グッズ」の3種類に大別され、これらを収納ボックスに収納することで一体性を高めるとともに、プレゼントとしての演出を図っている。

「『かしこいクルマの使い方』を考えるためのグッズ」としては、調査の趣旨とクルマ利用についての事実情報提供を目的とした「調査趣旨冊子」および安全・健康・環境・コストに関する4種類のリーフレットを作成し、4種類のリーフフレットについては市民の関心度合いに応じて配布提供を試みた。

「『かしこくクルマを使う』ためのグッズ」としては、7種類を作成した。このうち「バス停マップと時刻表」は、行きだけではなく帰りのバス停や時刻表を利用可能な系統別にまとめた携帯型として作成し、所要時間の認知が現実と乖離している結果を鑑み、バスロケデータの分析結果も踏まえ所要時間の情報も記載した。アンケートでは、約半数の対象者が天神地区に出かける際に「バス停マップと時刻表」を利用したと回答するなどの結果が得られ、大変好評であった。

また、「プログラム関連グッズ」には、MMグッズに対する追加のオーダーが受けられる「注文シート」や地元バスのミニペーパークラフト等があり、さらに対象者不在時には市民に馴染みのある宅配便の不在票と類似したデザインの不在票と手書きのメッセージを投函するなど、丁寧さを重視している。

このようなMMグッズを用いたコミュニケーションを行うことで、クルマ利用時間が事前事後で22%減少するなどの効果が現れており、一人ひとりに対するきめ細かなコミュニケーションとそのためのグッズというトータルでのMMデザインが、かしこいクルマの使い方の普及に貢献できたものと考えている。

JCOMM実行委員会から

動機付け冊子、公共交通路線図、公共交通時刻表などが一つ一つ入念に検討され、機能性の高いグッズとして仕上げられていることに加え、付箋やマグネット等の付録的なグッズも含めた全体のデザインが統一されていることで「ブランド化」が図られている点が高く評価されました。今後のMMグッズ作成のモデルとなる可能性に鑑み、JCOMMデザイン賞に選定されました。


題目

wap(和歌山都市交圏公共交通路線図)

受賞者

WCAN交通まちづくり分科会マップチーム

受賞概要

和歌山都市圏公共交通路線図「wap」のコンセプトは「マップを使って街を歩き倒す」こと。「wap」の特徴は(1)「鉛筆でも容易に書き込める」ことをねらい、ありがちなコート紙ではなく非木材紙を採用したこと、(2)路線沿線施設の記載はできるだけ控え、「wap」を手に取った人が自分自身に必要な沿線施設やメモを自由に追記できるように配慮、(3)色覚バリアフリーを意識しできるだけ配慮、(4)公共交通に関心が薄い方にも手にとっていただきやすいよう「路線図」らしくないポップな表紙デザイン、など。このwapを使って気軽に町中を巡ることで個々人が「世界でひとつだけのwap」が完成できるしかけを施し、「まちの再発見」のためのツールとしても使えるものを目指した。

実際の地形図をベースにしているので、居住地あるいは現在地・目的地と公共交通機関との位置関係が明確になるメリットがあり、バスターミナル利用者約100名の対面式アンケートでも約8割が「このwapがあれば、バス利用の増加が期待できる」あるいは「バスへの興味・関心は増す」と好意的な反応を示している。また、事業者も路線を案内する際にこの「wap」を活用することもあるという。

「wap」の補完情報はwap ONLINE(http://ocean547.net/wap/)にて最新情報を配信することとしているほか、沿線の情報や画像の投稿を受け付ける体制を執り、wapを軸に「街を発見する」機運の醸成に努めるほか、学校現場などの連携を図れる体制を整えていく。

JCOMM実行委員会から

全体的品位に加え、色使い、利用者自身が鉛筆で書き込むことを想定した地図内の余白の使い方や紙質、キャッチコピーならびに地図の使い方の説明文の質、色覚異常者への配慮など、デザインの意匠性ならびに公共交通路線図としての完成度が高く評価されました。今後、他の地域で公共交通路線図を作る際に大いに参考になると考えられることから、JCOMMデザイン賞に選定されました。


題目

健康歩行量TFPに向けた技術開発

受賞者

(受賞研究業績=中井 祥太・谷口 守・松中 亮治・森谷 淳一:健康意識に基づく万歩計を用いた歩行量TFPの実施効果分析,第1回日本モビリティ・マネジメント会議,2006,他)

中井 祥太(前岡山大学大学院(現福岡地所株式会社))

受賞概要

現在一般的に行われているMM手法は「環境改善」「渋滞解消」「公共交通利用促進」を動機付けとした技術群であり、「個人の健康意識」に重点的に着目したMM手法の開発は行われていなかった。本技術開発では、私的動機である「個人の健康意識」の活性化を通じ日常生活の中で歩行量増加を促す新しく簡便な技術手法(健康歩行量TFP)を開発し、その実施を通じて自動車利用の削減、公共交通利用の促進、福祉コストの削減を達成するとともに、個人の公共心を喚起するきっかけにつなげようとするものである。

健康歩行量TFPは、①誰でも入手できる万歩計を用いて起床時から就寝時に至る詳細な歩行実態を調査する手法、②その結果に基づいた健康促進のための歩行量増加に向けた診断カルテの作成や、歩行量増加の行動プラン票の作成技術、③継続効果も含めた改善実態の把握・評価法、から構成される独自の一連のシステムから構成されている。4,000通り以上にも及ぶ個別の診断カルテの作成基準の策定や、独自のコミュニケーション技法に至るまでの調査技術を確立することで、誰にでも簡単に同様の調査が実施可能となっている。

その有用性についても、1日の歩行量が約30%増加し、副次的効果として自動車利用時間が約27%削減されるという結果も得られている。健康に対する動機付けでは、その問題をより身近に感じることが出来るため、公共的な問題意識の低い被験者に対しても、一定の効果を得ることが確認できた。また、健康歩行量TFPと都市整備を有機的に組み合わせることで、環境負荷が低く、居住者の健康レベルを維持できるまちづくり方策を検討可能であることも示された。

JCOMM実行委員会から

今回のTFPは、近年社会的関心がますます増大しつつある「健康」に着目したもので、これまで対象とし難かった人々に訴求できる点に大きな特徴があります。また、TFPの原点である丁重なコミュニケーションを万歩計を活用しつつ展開し、その大きな有効性を実証的に明らかにしています。ついては、その新規性・有用性が共に高く評価され、この度、JCOMM技術賞に選定されました。