平成25年度JCOMM四賞の各受賞者

JCOMM実行委員会では、平成25年4月中旬までに、ご応募・ご推薦を頂いた取り組み・研究の中から、平成25年度JCOMM賞の各賞受賞者を選定いたしました。受賞者の方には、第八回JCOMMにて、表彰を行います。


題目 社員プロジェクトチームによる顧客満足度向上、及びММ技術を応用した観光行動変容の取組み』
受賞者

江ノ島電鉄株式会社、江ノ電ブランドプロジェクトサポートチーム

(江ノ電商事株式会社、大和小田急建設株式会社、

株式会社環境情報、株式会社玄、株式会社浜田広告社)

受賞概要

江ノ島電鉄では、現業を含む社員を交え顧客満足度向上を目的としたプロジェクトチームを平成22年から社内に発足し、利用者アンケート調査や実際のお客様の行動調査を実施するなどの改善を進めている。

プロジェクトでは主要駅の案内表示・情報提供の更新を図ることで観光客の分散を図ると共に、ММ技術を応用し社員と利用者のコミュニケーションによって行動変容を促すことにより利用者の不満が高い混雑の緩和及び観光行動の夕夜間シフトを目指す取り組みを実施している。

具体的には平成23年に駅構内サイン更新を実施し、平成24年4月より沿線観光施設の営業時間延長、夕夜間促進のための割引チケット発売、ММ技術を応用したコミュニケーション・アンケートの実施、夕夜間の観光行動変容に対し駅係員とお客様とのコミュニケーションによる誘導を実施している。さらに、現場社員の自発的な取り組みもなされている。

実施後、情報提供やコミュニケーションの実施により利用者の行動変容が出現し、ピークカット及び混雑緩和に一定の効果を得ただけではなく、観光回遊の拡大も図ることができた。一方、コミュニケーションの濃淡による利用者行動変容の差も出現している。

ММ技術を応用した混雑緩和や利用促進の取り組みを交通事業者自らが企画立案し、現場を含む社員チームが実施内容の検討を行うだけではなく、現場に立って利用者に広報や積極的な案内をすることによって変化を促し、顧客満足度の向上や問題解決につながっている。

江ノ電では本プロジェクトの取り組みが全社的な意識改革を促し、単に観光案内にとどまらず、判りやすい情報提供について現場社員の自主的な発案と行動を促すきっかけともなった。また、混雑緩和による行動変容を促すことで、地域の新たな観光資源の開拓や、観光交流事業の実施、シャトルバス実験などの新たな取り組みの実施などにも寄与するものとなり、地域活性化や公共交通活性化にプラスの効果を与えている。

JCOMM実行委員会から

交通事業者の職員が中心となり、コミュニケーションの企画やツールの検討を行い、自らもММコミュニケーターとして直接的コミュニケーションを積極的に行っているプロジェクトです。自律的・持続的なММの取り組みだけにとどまらず、地域貢献にも寄与しており、交通事業者が進めるММの良き取り組み事例として高く評価され、プロジェクト賞に選定されました。


題目 神門通りの出雲大社門前にふさわしい風格とにぎわい再生事業
受賞者

島根県土木部出雲県土整備事務所

島根県土木部都市計画課、出雲市産業観光部観光交流推進課、出雲市都市建設部まちづくり推進課

神門通り甦りの会

鈴木 春菜、桑子 敏雄

株式会社バイタルリード

脇田 祥尚、橋本 成仁、宇佐美 淳、小野寺 康、南雲 勝志

受賞概要

神門通りは、出雲大社への参詣道として約100年前に開設され、沿道は門前町として栄えてきたが、モータリゼーションの進展によりかつてのにぎわいが失われていた。本事業は60年に一度の出雲大社大遷宮にあわせて全国から多くの観光客をお迎えするため、メイン参詣道である神門通りに風格を持たせ、かつてのにぎわいを再生しようという大きな目標に向けて、土木行政、建築行政、観光行政、商業施設がそれぞれの事業分野から取り組んだものである。

具体的には、ハード整備として「シェアド・スペース(共有空間)としての石畳化工事」、通りの景観・魅力向上として「沿道建築物の修景助成制度」、「店舗前の日除け暖簾設置や路上への置き座設置」、交通規制・誘導として「観光バスの北進一方向通行自主規制」、ММ施策として「神門通りPR館開設による(各種情報提供、行動アドバイス)」、「まち歩き観光促進のためのコミュニケーション・アンケート(CA)」、「石畳裏面へのメッセージ記入イベント」等を行った。

ММ施策の効果としては、PR館の運営では、積極的な街頭での声掛けなどによる攻めの観光情報提供により、来訪者の満足度向上やリピート意向の向上に大きく寄与した。CAでは、1)参加者の駐車場選択で離れた駐車場が最も多い、2)滞在時間が平均2.8時間増加、3)周辺観光スポット立ち寄り数が増加、4)滞在時間が増加することで出雲大社周辺での支出額が増加といった効果が計測された。

事業全体からの効果としては、神門通りのまち歩き客が著しく増加してにぎわいが創出

された。また、シェアド・スペース構造の石畳化によって、自動車の走行速度が低下し通りの安全性が向上したとともに、出雲大社門前にふさわしい風格を有する景観が創られた。

JCOMM実行委員会から 出雲大社の門前にふさわしい観光交通まちづくりを推進し、多様な関係者との協働によるハードとソフトの緻密な連携がなされたプロジェクトです。神門通りの物理的な空間と景観への配慮、安全性、回遊性の工夫などの各要素が複合的かつ総合的に組み合わされ、さらにまち歩き促進のММグッズのデザイン性や、ММの計画性や戦略性にも長けている点が高く評価され、プロジェクト賞に選定されました。

題目 甲府北部地域バスマップ
受賞者

甲府市企画部リニア交通室交通政策課

名取 優太(山梨県庁(前山梨大学))

長田 美月(フジタ(前山梨大学))

小野 絵美(甲州市役所(前山梨大学))

佐々木 邦明(山梨大学)

受賞概要

甲府市では公共交通体系基本構想を平成23年度にまとめ、公共交通路線の再編や維持の目的の明確化を行いました。その中で「わかりやすい公共交通情報の提供や利用促進に向けた取り組み」として、誰にでもわかりやすいバスマップの配布を施策の一つとして示し、特に高齢者にもわかりやすいバスマップを作成・配布することを具体的な施策として掲げました。甲府北部地域バスマップは、そのような基本構想に沿って製作されたものです。

甲府市内には現在多くのバス路線がありますが、既存のバスマップは全域の路線情報のみが掲載されており、時刻等の情報はバス停まで行くか、ウェブサイトより検索が必要でありました。そこで今回は以下のような特色を持たせたマップを計画しました

 1)高齢者が使うことを第一に考えた、見やすく、わかりやすい内容

 2)高齢者がバスを利用するときに役立つ情報を掲載

 3)外出するときにも持ち運びに便利なサイズ

これまでに得られた高齢者の意見等をベースとしてプロトタイプを作成し、甲府北ブロックで開催された公共交通地域勉強会において、本マップのプロトタイプを配布し、来場者のアンケートから得られた意見を反映して、より高齢者の実情に応じたマップとすることを意図しました。配布後は市民からの好意的な問い合わせ等が多く寄せられるなど、その活用が期待されており、対象路線のバス利用者等の継続的なモニタリングを予定しています。

今後は、公共交通体系基本構想に掲げた「みんなで守り育てる持続可能な公共交通体系の実現」を目標として

 1)公共交通利用の意識づくりと利用しやすい環境づくり

 2)地域の実情に即した公共交通の確保

 3)交流と賑わいを支える公共交通づくり

を市の具体的な施策の柱として据え,本マップなど、モビリティマネジメントのツールを援用して公共交通体系の実現を図って行く予定です。

JCOMM実行委員会から 制作過程でヒヤリングを行うなど利用者の視点から必要な基本情報をわかりやすく伝える姿勢がうかがえ、多世代が利用することから落ち着いた色彩などにも工夫が凝らされており、意匠性も高く評価されます。また、必要な情報を網羅的に掲載しながらも、サイズをコンパクトにまとめたマップは、配布場所や配布方法が広がる可能性を秘めており、持続性も大いに期待されることから、デザイン賞に選定されました。

題目 地方都市における健康支援に着目した一連の低炭素交通政策導入に関する有効性の評価
受賞者

真坂 美江子(阿南工業高等専門学校)

加藤 研二(阿南工業高等専門学校)

近藤 光男(徳島大学大学院)

奥嶋 政嗣(徳島大学大学院)

受賞概要

近年、二酸化炭素等の排出増加に伴う地球温暖化問題がクローズアップされており、増加量が多い、運輸部門での二酸化炭素排出量削減の取り組みは必須とされている。また、大規模な工業団地や住宅地を抱えた地域特性を持ち、公共交通が未発達である地方都市は移動手段の大多数が自動車に頼られており、今回、対象とした徳島県も同じような地域特性を持つため、県民の運動不足による生活習慣病患者数の増加が問題となっている。

そこで、健康支援と低炭素交通政策を結び付け、健康問題と環境問題を同時解決することを目的とし、徳島県を対象に、継続的な意識調査ならびにММを含めた社会実験結果に基づいた「健康支援に着目した低炭素型交通政策の導入」による意識の変化およびその効果についてまとめたものである。

その成果は以下の通りである。

始めに、特定工業団地従業者へのアンケート調査を実施した結果、健康支援施策を導入すれば「自動車抑制意識」あるいは「自動車利用がなくても困難な状況でないと考える意識」が変容する可能性があることが示された。また、健康に着目した政策を導入すれば、奨励金を導入する施策で得られるCO2削減量の約10倍程度の削減効果が期待できることも示された。

次に、継続的に施策に参加できる仕組みづくりとして、現代人の約9割が保有し、かつ日常的に身につけている「携帯電話・スマートフォン」を利用したサポート・ツールを開発、そのツールを用いた社会実験を実行した。その結果、本ツールを継続的に利用すると、高血圧症や2型糖尿病等の生活主観病発症リスクを約15%削減できる可能性を示された。このように、健康支援と低炭素交通施策を結び付けた施策の導入についての有効性を定量的に示しているとともに、より効果的な自動車利用抑制方法についての可能性を示している。

JCOMM実行委員会から 公共交通の利便性の低い地域における通勤を対象に、健康支援のためのツールの開発を行うなど多角的な視点からその有効性について検証を行った取り組みです。健康支援を主体としたモビリティマネジメント技術は、かねてからその有効性が認識されており、今後同様の事例を実施する際の参考となる内容が多く、実務面での貢献が大きいと高く評価されたことから、JCOММ技術賞として選定されました。

題目 八戸市・圏域内における多方面的かつ戦略的公共交通利用促進マネジメント
受賞者

八戸市

八戸市地域公共交通会議

八戸圏域公共交通計画推進会議

株式会社メディアシティ

株式会社KCS

有限会社イニシオ

パシフィックコンサルタンツ株式会社

一般社団法人北海道開発技術センター

受賞概要

青森県八戸市では、公共交通の利用促進に対して早い段階より取り組んできた。特に平成19年度に八戸市地域公共交通会議を設立して以降、八戸市地域公共交通総合連携計画、八戸圏域公共交通計画の策定など、戦略的な取り組みを実施するための(予算獲得を含めた)基礎を構築してきた。

その成果は、市内を運行するバス事業者(3事業者)のバス路線を掲載した「はちのへバスマップ」の継続発行、公営と民営(2事業者)の共同による八戸駅(新幹線発着駅)と中心街間の10分間隔運行の実施(運行経費削減と利用者増を実現)、中心街バス停の青空バスターミナル化(八戸中心街ターミナルの誕生)、「八戸中心街ターミナルモビリティセンター(モビセン)」の設置、八戸公共交通アテンダント「はちナビ娘“はちこ”」の誕生、住民・転入者・小中学生MM、災害時公共交通行動指針策定など、利用促進に資するサービス改善からソフト施策、ひいては災害時対応まで、多岐に及ぶ。

中でも、平成23年10月より実施した「路線バス上限運賃化実証実験」では、市内バス運賃を上限300円、八戸圏域内を上限500円とする大胆な運賃改定を行い、平成24年11月時点で、実験開始前に比べて平日1日あたりのバス利用者数8.5%増(うち運賃支払者数16.9%増)という明確な成果を生み出した(なお、実証実験が終了する本年10月以降も上限運賃化の継続実施が予定されている)。

このような多様な取り組みは、行政、バス事業者だけでなく、学識経験者やコンサルタントなどの多様な主体との連携により実現されてきたものであり、各取り組みの連動性は、戦略的なマネジメント(とその実行体制)によって担保されてきたものである。

鉄道との連携、学校MMの継続、企画商品開発など今後も取り組むべき課題は多いが、引き続き連携と戦略性を維持しつつ、地に足のついた、持続的・戦略的マネジメントを実施していく予定である。

JCOMM実行委員会から

公共交通利用促進のための様々な取り組みが工夫されており、その継続性や広がり、実施効果において参考にすべき内容が多く含まれています。特に事業者間の協力関係を構築し利用者の目線にたった公共交通サービスの充実を段階的に実施している点が高く評価されます。また、八戸の都市構造に対する配慮もなされており、普及啓発のためのパンフレットも充実していること等が総合的に高く評価され、マネジメント賞として選定されました。