平成26年度JCOMM四賞の各受賞者

JCOMM実行委員会では、平成26年4月中旬までに、ご応募・ご推薦を頂いた取り組み・研究の中から、平成26年度JCOMM賞の各賞受賞者を選定いたしました。受賞者の方には、第九回JCOMMにて、表彰を行います。


題目 「阪高SAFETYナビ」の普遍化による総合的な事故削減を目指す取り組み
受賞者

阪神高速道路株式会社

阪神高速技研株式会社

株式会社交通システム研究所

受賞概要

阪神高速では、平成22年度に策定した「交通安全対策第2次アクションプログラム」において、従来の事故多発地点に着目した道路施設への対策に加えて、「阪高SAFETYナビ」を中心としてドライバー一人ひとりに安全運転を働きかける取り組みを柱のひとつに掲げており、平成23年2月から開始した同取り組みは、広範で持続的な安全運転訴求体制を構築・普遍化していくことによる総合的な事故削減を目指している。

「阪高SAFETYナビ」は、MMの考え方に基づくアプローチで安全運転への行動変容を働きかける無料のWEBプログラムであり、膨大な事故データを根拠に、安全運転度を診断し、「個別で」「具体的な」交通安全情報を「コミュニケーション手法」により合理的に訴求することで安全運転への行動変容を狙っている。また、安全運転の定着(持続性)を期待したコンテンツ構成や、PDCAによる各コンテンツの品質向上や他の施策への展開性を見据えた取り組みデータの蓄積など、コンテンツ自体に様々な工夫が為されており、蓄積された取り組み結果や利用者アンケートから、同コンテンツの事故削減につながる学習効果と行動変容効果が確認されている。

本プロジェクトでは、同コンテンツの実質的効果が期待できるにも関わらず、「往々にして自分事化されにくい」という交通安全の取り組みにおける根本的な課題が障壁になっていたことから、取り組みの普遍化に向けて「評価の醸成」「価値・必要性の訴求」「利用環境の拡大」といった戦略的なプロセスを遂行することで、広範で持続的な訴求体制の定着が実現しつつあり、平成26年4月時点で延べ約2万人が取り組んでいる。

直近3年間では、道路施設への対策効果をあわせて約500件の事故削減が確認されており、今後は、自動車教習所や警察署、社会教育施設などでの採用を働きかけるなど、地域一体となった普遍的な取り組みへの発展を目指している。

JCOMM実行委員会から

阪神高速道路を利用するドライバーに対して「阪高SAFETYナビ」という無料のWEBプログラムを提供することで、安全運転への行動変容を狙ったMMの新たな試みです。プログラムでは膨大な事故データを根拠とし、個人の運転特性を考慮した上で合理的に交通安全情報を提供することで、行動変容を促進しています。洗練されたシステムで今後の発展可能性も高く、また利用者からの評価も良好なため、プロジェクト賞にふさわしいと判断されました。


題目 明石市Tacoバス:PDCAによる100万人までの軌跡
受賞者

兵庫県明石市土木交通部交通政策室

株式会社建設技術研究所大阪本社道路・交通部

受賞概要

Tacoバスは平成16年に実験運行を開始し、18年度には3路線で本格運行に移行、そして、19年5月に策定した総合交通計画において、路線バスの運行していない市西部地域における鉄道駅と地域を結ぶ交通体系として路線拡大することとなった。また、運行の見直し基準(収支率50%)も設定し、同年11月には年間利用者100万人を目標として17路線で運行を始めたが、20年度の利用者は72万人にとどまったため、路線の見直しや利用促進の取組みを始めることとなった。

路線の見直しについては、利用実態調査や住民ワークショップ等を踏まえてこれまで9路線で実施してきたが、いずれも見直し後は利用者が増える結果になっている。

また、目標に満たない路線でも利用者が増加傾向の場合などは、見直しに迷うケースもあったため、平成24年度に総合交通計画を改定する際に、利用実績から目標年までの達成可能性を予測し、改廃判定をするスキームを確立した。これにより平成26年度からは3路線を見直している。

一方、MM的手法による利用促進の例に、未利用者等の利用誘導を図るスタンプラリーがある。乗車路線に応じたシールを配布、集めると商品に応募ができる取り組みであるが、昨年度からは既存利用者の利用頻度も高めるために、利用日と同じ数字のシールを配布し列を揃えるビンゴ形式を採用している。

他にも休日の利用促進を図るために、土日祝日は同伴の子供2名まで無料となるエコファミリー制度の導入、地理が不慣れでクルマに頼りがちな転入者へのお試し乗車券の配布など、課題に応じた取り組みの横断的な実施もあり、平成25年度末に利用者は102万人を記録した。

近年では、利用促進を図る「仲間」を増やすことを目指し、地域イベントでのPRやサポーターの認定、学校MMなどによって、地域や沿線施設との連携に努めた結果、地域の自主イベントや利用者に特典を設ける応援店が出現するなど、地域でバスを支える意識も広がりを始めている。

JCOMM実行委員会から コミュニティバス利用促進のため、平成20年度から地道で多様な試みが継続されています。特に利便性向上のための10種の取り組みと利用促進のための15種の取り組みを段階的に組み合わせて展開し、平成25年度には利用者数が目標の100(万人/年)に達したことは高く評価されます。取り組み全体が丁寧に構成されており、地域モビリティの改善とPDCAの実行という観点から模範的な内容であるため、プロジェクト賞にふさわしいと評価されました。

題目 大学生による交通まち育ての挑戦
受賞者

H・O・T Managers

受賞概要

2010年9月に組織した学生団体「H・O・TManagers(以下HOT)」では、モビリティに対する人々の意識変容につなげる様々な“キッカケづくり”を行う「交通まち育て」に挑んできた。HOTでの「交通まち育て」とは、個々人の“私”的な想いやこだわりが意図・無意図にかかわらず結果的に“公”につながっていくような形で、まちと関わることを前提とした「まち育て」の考えと、MMの考えを基盤としている。

情報誌「ほっと」では、公共交通の利用に際する不安感を払拭するための基本的な情報を提供するとともに、目的地としての地域の情報を加えて、地域内回遊促進による公共交通の利用機会創出を図っている。イベントでは、人々に公共交通に親しみを持ってもらい、事業者と市民の交流が芽生える場を目指している。また、MMの展開をより多様にするため、交通とは無関係な地域の人材とのコラボレーションを積極的に行っている。

約4年間の活動を通して、事業者や行政、市民に、公共交通に対する前向きなムーブメントを巻き起こすことが出来た。例えば、初回イベント時は消極的であった事業者からは企画相談を持ちかけられたり、意見交換会を実施したりするようになった。特筆すべきは、情報誌で取材した店舗が、これまでになかった公共交通の利用を念頭に置いたチラシを自発的に製作した点である。交通まち育ての輪が市民にも広がったと言える。

学生による自発的MM活動のねらいの1つに、公共交通を利活用しようとする環境作りがある。活動を続けていく中で、少しずつ地域全体の意識や行動に変化が表れてきた。今後、MMをはじめとする施策によって公共交通の利活用・地域内回遊の促進が進み、気軽に公共交通が使えるよう、学生サークルという形態から社会人も交えた新たな形態へレベルアップを図り、「交通まち育て」の仕掛け役として引き続き活動を行う。

JCOMM実行委員会から 平成22年より大学生のみによって自発的に取り組まれている公共交通利用促進のプロジェクトで、情報誌「ほっと」の継続的発行やバス利用促進に関する多くのユニークなイベントから構成されています。弘前のまちを自分達の手で変えていくという「交通まち育て」の発想は様々なメディアにも取り上げられ、まち側もその波及効果を受けつつあります。その取り組み姿勢と熱意が高く評価され、プロジェクト賞にふさわしいと判断されました。

題目 日立電鉄線跡地を活用した『ひたちBRT』におけるデザインツール群
受賞者

ひたちBRTサポーターズクラブ

日立市

日立電鉄交通サービス株式会社

山本 早里

受賞概要

日立市は、日立製作所発祥の地であり、鉱工業を中心とした『ものづくり』のまちとして発展してきた。細長い地形、鉄道駅周辺に立地する大規模事業所、高度経済成長期に整備された丘陵部の団地など特徴的な都市構造等から、道路交通渋滞や公共交通利用の減少等多くの課題を抱え、平成17年には、地方鉄道『日立電鉄線』が廃止された。

このことは、地域住民にとって公共交通の必要性、重要性を実感する機会となり、鉄道跡地に持続可能な交通手段であるBRTを導入するきっかけとなった。BRTは近年注目を浴びる公共交通機能であるが、導入事例も少なく地域住民にとってはあまり馴染みがない乗り物である。この導入を契機に、バス交通のマイナスイメージを払しょくし、公共交通利用の減少に歯止めをかけ、新たな乗り物を広く市民へ周知を図るとともに、本市や地域の魅力をPRするため、様々なデザインプロジェクトを進めてきた。

①車両や停留所サインなどのハード面でのデザイン、②地域を巻き込んだ取り組みなどのソフト面でのデザイン、③地域がBRTを活かし、新たなまちをデザインすることをコンセプトとし、単なる車両のデザインにとどまらず、統一感ある道路や待合空間の整備、産業・文化遺産の継承、そして体制づくりも含めたトータルデザインを目指した。

その主な内容は、路線バスとの差別化を図り新規性を打ち出す車両デザインと一体性のある停留所サインの導入、運行ルートや停留所等を記したリーフレットや時刻表、導入地域の資源や魅力をPRするための沿線マップ、関連グッズ等の製作を行った。

BRT運行前後ではバス利用者が4倍に増加し、満足度調査においても、車両等のデザインは高評価を得ていることから、本プロジェクトにより、新たな交通インフラの導入と併せ、デザインという視覚的な印象を与えるものと、住民参画という行動的手法により、BRTを含めた公共交通の利用促進と市民の行動意識の変革のきっかけにつながった。

JCOMM実行委員会から 制作過程でヒヤリングを行うなど利用者の視点から必要な基本情報をわかりやすく伝える姿勢がうかがえ、多世代が利用することから落ち着いた色彩などにも工夫が凝らされており、意匠性も高く評価されます。また、必要な情報を網羅的に掲載しながらも、サイズをコンパクトにまとめたマップは、配布場所や配布方法が広がる可能性を秘めており、持続性も大いに期待されることから、デザイン賞に選定されました。

題目 小学校における札幌らしい交通環境学習推進事業
受賞者

札幌らしい交通環境学習検討委員会

札幌市市民まちづくり局

総合交通計画部都市交通課

一般社団法人北海道開発技術センター

株式会社アドバコム

公益財団法人交通エコロジー・モビリティ財団

受賞概要

札幌市では、「暮らし」・「活力」・「環境」を重視する公共交通を中心とした交通体系の確立を計画理念とする札幌市総合交通計画を平成23年度に策定し、モビリティ・マネジメントを今後の公共交通に関する施策として位置付けている。この一つとして、小学生のときから公共交通の重要性を認識し、積極的に利用するという交通行動を身に付けられるよう、小学校における札幌らしい交通環境学習推進事業を開始した。

23年度から3か年にわたり(公財)交通エコロジー・モビリティ財団の支援を受け、「札幌らしい交通環境学習検討委員会」において、学習プログラム等の検討を行ってきた。委員会に設置した小学校教諭を主体とするワーキンググループでは、授業の内容を検討し、社会科、道徳、総合的な学習の時間において、1年生1回、3~6年生各3回の計13回の研究授業を実践するとともに、学習プログラムを成果としてまとめた。

加えて、教諭等を対象とした「札幌らしい交通環境学習フォーラム」を25年度に開催し、多くの教諭の参加を得たほか、ホームページで交通環境学習に関する情報を提供して、教諭がアクセスしやすいよう環境整備を行った。関係団体等との連携では、交通事業者の協力による体験学習を実施するとともに、札幌市内の小学校約200校で毎月配布されている「こども環境情報紙エコチル」を発行する(株)アドバコムが、24、25年度に同紙上において「札幌市の公共交通について考える小学生作文コンク―ル」を実施した。

本取り組みは、小学校教諭が主体となって、学習指導要領を踏まえた学習プログラムを構築しており、小学校で持続的に実践することが可能となっている。本市においては、今後も関係団体等との連携を継続して、交通環境学習をより多くの小学校に広げていきたいと考えている。

JCOMM実行委員会から

札幌市内の全小学校を対象とした戦略的なモビリティ・マネジメントです。市の上位計画や札幌市学校教育の重点をもとに、学校教員が主体となり、学識経験者やコンサルタント等の専門家や交通事業者と密に連携し、明確な目標の下、毎年活動を継続し、テーマや対象を年々拡大している模範的な取り組みです。学校MMのさらなる普及、推進においても大変参考になる取り組みであり、マネジメント賞にふさわしい取り組みと判断されました。