平成27年度JCOMM四賞の各受賞者

JCOMM実行委員会では、平成27年4月中旬までに、ご応募・ご推薦を頂いた取り組み・研究の中から、平成27年度JCOMM賞の各賞受賞者を選定いたしました。受賞者の方には、第十回JCOMMにて、表彰を行います。


題目 戦略的MMの展開による新設!南部広域バス利用促進プロジェクト
受賞者

京都府、京都市、長岡京市、神田佑亮、宮川愛由、

大山崎町、国土交通省近畿整備局京都国道事務所、

国土交通省近畿運輸局京都運輸支局、

長岡京市商工会、淀・淀南・納所地域まちづくり協議会、

阪急電鉄株式会社、京阪電気鉄道株式会社、

京阪バス株式会社、阪急バス株式会社、

株式会社地域未来研究所、学校法人立命館立命館中学校・高等学校

受賞概要

本プロジェクトは桂川で分断されている京都市淀地域と長岡京市・大山崎町地域の鉄道駅間を結ぶ新たなバス路線を、行政と交通事業者が役割分担をし、平成25年12月の阪急西山天王山駅の新駅開業と同時に実現した。新規のバス路線であり、需要創造が最大の課題であったため、開業前、開業後、それぞれに沿線一体となってMMを戦略的に展開した。

当該路線は、京都市の京阪淀駅と長岡京市の阪急西山天王山駅、JR長岡京駅を結ぶもので、地域住民の新たな外出機会、通勤通学の利用を想定し、居住者MMと事業所MMを、段階的に実施した。

協議会を設置し、路線開業前には各組織の広報誌や市民新聞でPRを行った。

需要見通しが読めない新規路線であるものの、使える水準のダイヤ設定を行うため、社会実験として朝夕の増便経費の負担やデータ収集の費用を行政側で負担し、リスク分担を図った。

運行開始後においては、通勤利用を勘案し、ダイヤ遅れ等運行状況の把握や渋滞交差点の交通量状況調査、沿線学校生徒へのアンケート調査を実施し、継続的な改善に取り組んだ。

居住者MMでは、地域の魅力をそれぞれの対岸の住民に伝える「お出かけマップ」を作成し、お試し乗車券の配布による需要喚起を行った。

事業所MMではワンショットTFPを行うほか、プレス発表、広報誌、ニュースレターによる定期的な情報提供を継続的に展開した。

これらの結果、当初の予想を大きく上回り、開業1年(平成26年12月末時点)の累積利用者数は当初予測の2.15倍となった。平成26年4月からは、交通事業者の自主運行が開始され、同年9月からは、新たに中学校・高等学校が沿線に移転し、通勤通学時間帯の増便及び最終便の繰り下げなど、利便性の向上が進んでいる。

JCOMM実行委員会から

複数の府県、交通事業者による協議会において、新規広域バス路線の企画段階から多様な関係者が連携しつつ、MMを戦略的に展開し、リスク負担抑制による自主的な運行を実現した点は、他地域の路線開設への応用可能性が高いものと期待されます。また、新規路線にもかかわらず短期間で、公共交通利用者の増加を実現した交通問題の緩和に対する貢献は特筆すべきものがあります。以上の理由から、プロジェクト賞として選定されました。


題目 京都市「歩いて楽しいまちなか戦略」
受賞者

京都市 都市計画局歩くまち京都推進室

「歩いて楽しいまちなか戦略」推進会議

四条通エリアマネジメント会議

京都市タクシー駐停車マナー向上マネジメント会議

中央復建コンサルタンツ株式会社 計画系部門交通計画グループ

受賞概要

京都市では、暮らす人も訪れる人も“歩・歩・笑み”を浮かべるまちであり続けるため、人と公共交通優先の歩いて楽しいまちづくりを推進している。「歩いて楽しいまちなか戦略」の理念は、京都の魅力と活力が凝縮した歴史的都心地区(四条通、河原町通、御池通及び烏丸通に囲まれた地区)が50年後も100年後も魅力あふれるよう、歩行者と公共交通優先の歩いて楽しいまちづくりを推進し、世界に誇れるまちづくりを目指すものである。

本戦略では、四条通の道路空間再編やタクシー駐停車マナー向上に向けたMM、物流対策、細街路での歩いて楽しいまちなかゾーンの整備等を面的に展開することで、歴史的都心地区全体でのMMを推進している。平成18年度の「歩いて楽しいまちなか戦略推進協議会」の設立を契機として、平成24年1月には四条通(烏丸通~川端通間)の歩道拡幅及び2車線化という大都市のメインストリートでは初めての都市計画決定が行われた。

平成19年度の社会実験では、四条通・細街路ともに歩行者数が約2割増加し、2人組が横並びで歩ける割合は約2~3割増加など、歩行環境の改善効果を確認している。また、タクシー駐停車マナーMMではTFPを実施しており、平成22・23年度には、「四条通に設置されているタクシー乗り場以外での客待ち」を行っているドライバーが約5~6割存在していたのに対して、平成25年度には約4.5割に減少している。

平成24年1月の四条通2車線化の都市計画決定は一つのマイルストーンであった。平成23年度以降、拡大展開されている「歩いて楽しいまちなかゾーン」についても、当該地区及び周辺地区への波及という観点から極めて重要な取り組みと言える。なお、四条通の整備は平成27年10月末完成予定であり、整備後には“歩行者と公共交通優先の歩いて楽しいまちになったか”という観点から様々に発現する効果を検証していく予定である。

JCOMM実行委員会から 京都市全体の総合交通戦略のもと、歴史的都心地区を対象として、タクシー駐停車マナー向上に向けたMMや細街路における「歩いて楽しいまちなかゾーン」の整備等の取り組みを面的に展開することで、地区全体でのまちづくりと一体となったMMを推進し、混雑緩和や細街路における歩行者の安全性向上などの効果をあげています。また、長年にわたり地区関係者との議論を重ねながらプロジェクトを進めてきた取組姿勢が高く評価され、プロジェクト賞として選定されました。

題目 公共交通接近通過お知らせボックス「あしあとランプ」
受賞者

若山 裕一(ITSアライアンス株式会社)

吉田 樹(福島大学経済経営学類准教授)

株式会社千代田コンサルタント

三沢市地域公共交通会議

受賞概要

路線バス通過お知らせツール「あしあとランプ」は直近バスが通過したかまだかという利用者にとってはとても重要な情報を誰でも簡単に分かるような機器構成として平成22年に製作発売された「簡易バスロケーションシステム」であるが、同時期に三沢市地域公共交通会議において情報弱者にも分かりやすい情報提供と設置運用が容易で安価なバスロケーションシステムの導入検討が行われ、当該ツールの導入に至った。

機器メーカー、サービス運用者、統括アドバイザーによる三沢市での“ゆるやかな”連携プロジェクトは、当該ツールが持つ「バス利用者側に立ったシンプルな情報提供」と「安価な運用性」というコンセプトを崩さず、機器の安定化と機能拡張を行いながら、ツールの利用度向上とバス利用の利便性向上を目指した。また、単にバスロケーション情報の提供のみならず、バス運行に関する様々な情報提供ツールへと発展させていきながら、全体的なバス利用促進をプロジェクトの主目的とした。

情報をシンプルに絞った停留所表示機では、高齢者でもバスの通過を直観的に判断できるという利用者の声が得られ、市立病院の情報ディスプレイでは時刻表機能の整備や情報サイネージ機能の追加設置で多目的に発展し、アンケート結果からツール利用度も年々上がる結果となり、全体的なバス利用促進の1つの効果を得た。

導入当初のシンプルな機器構成からあらゆる利用者層のニーズに合わせ段階的に機能アップを行ったことで利用者側に立った情報提供としての評価を得ながら、路線別のキャラクターによるモチーフ・コンセプトとフレンドリーな当該ツールのデザインが一体に提供されたことが、モビリティ・マネジメントの質的向上に寄与するとともに、持続可能なモビリティの提供にも貢献できる結果となった。

JCOMM実行委員会から 地方のバスにとってハードルが高いバスロケーションシステムを必要最小限の機能で導入し、バス待ち時間の質向上につなげた事例です。インターフェイスもシンプルで、高齢者にわかりやすく、乗り方案内のリーフレットなど関連ツールも丁寧に作られている他、「みーばす」の利用者も増加するという定量的効果も得られています。その機能性に加え、他地域への応用も容易で、実務的活用可能性が高く評価され、デザイン賞に選定されました。

題目 『富山市のりもの語り教育』における市内全小学校でのММ教育(交通環境学習)普及啓発マネジメント
受賞者

富山市

㈱計画情報研究所

松本 謙一(富山大学人間発達科学部教授)

受賞概要

富山市では、平成23年度からモビリティ・マネジメント施策「とやまレールライフ・プロジェクト」の一環として、児童期という早い段階から自分たちが住む富山市のまちづくりを学び、環境や社会について意識を向け公共交通への関心を高めるとともに、これまで富山市が進めてきたLRTの整備やコンパクトシティの取り組みを切り口としてシビックプライドの醸成を図るため、小学校の学習プログラムの作成に取り組んできた。

この取り組みにより完成した学習プログラムについて、市内全小学校で活用してもらうため、平成26年度には「富山市のりもの語り教育推進協議会」を設立した。

「富山市のりもの語り教育推進協議会」の設立にあたっては、任意の教育団体である「富山市小学校教育研究会」の社会科及び生活科・総合的な学習の時間部会の構成員を委員に加えることで、現場の教員にとって親しみやすく、かつ、教員自らが交通環境学習に取り組む必要があるという自覚を促すことに努めた。

「富山市のりもの語り教育推進協議会」の組織体制は、学識経験者として富山大学人間発達科学部教授を会長とし、事務局には市長部局の交通政策課だけではなく、教育委員会を含む合同事務局とすることで、学校との連絡調整を円滑にし、さらに、市長及び教育長のリーダーシップにより、校長会や啓発フォーラムなどの機会を捉えて集中的なPRを行ったことで、平成26年度末には市内の約4割の小学校(全66校中25校)において、交通環境学習が普及した。

これまで行ってきた指定小学校における公開授業等で最も使いやすいとの意見が多かった小学3年生社会科の学習プログラムについて、今年度中に集中的にブラッシュアップすることで、平成28年度には市内全小学校に交通環境学習を普及させることを目標としているが、現場教員が主体的に関与する「富山市のりもの語り教育推進協議会」の体制により、目標達成は現実的なものとなっている。

JCOMM実行委員会から

富山市のコンパクトシティ戦略、MM施策等、上位計画に位置づけられ、また、教育委員会や現場の学校教員と連携して展開されるなど、極めて計画的かつ戦略的に展開され、完成度も高い取組であり、教育MMに取り組む他地域が参考にすべき内容が多く含まれています。効果測定の難しさから存続の危機に直面した際にも、内外からの支援を得ながら継続し続けている点も高く評価され、マネジメント賞に選定されました。