平成28年度JCOMM四賞の各受賞者

JCOMM実行委員会では、平成28年4月中旬までに、ご応募・ご推薦を頂いた取り組み・研究の中から、平成28年度JCOMM賞の各賞受賞者を選定いたしました。受賞者の方には、第十一回JCOMMにて、表彰を行います。


題目 官学協働による「あさひまちバス」の運行・利用促進・まちづくり
受賞者

富山県朝日町

京都大学大学院工学研究科・交通政策研究ユニット

富山県立泊高等学校

受賞概要

富山県朝日町は、人口約1万3千人で過疎地にも指定されている小都市であるが、2012年12月に運行を開始した「あさひまちバス」は、同月から2016年5月まで、42ヶ月連続で対前年同月の利用者数を上回り、現在も継続中である。

町内の路線バスが全て廃止されて以来、町が「公共バス」を運行していたが、町内移動をより便利にするため、2012年12月に京都大学の社会実験として「あさひまちバス」の運行を開始。その後、町が運行を引き継ぎ、自治町内会や高校、商工会青年部なども利用促進に取り組み、連続増加の成果を残してきた。

また、祭りや桜の季節には臨時便を出すなど、まちづくりの1つの要としての役割も果たしている。さらに、北陸新幹線開業後は、黒部宇奈月温泉駅への予約型直行バス「あさひまちバス・エクスプレス」を運行するなど、まちの活性化を支える手段となっている。連続増加の要因としては下記のような点を挙げることができる。

・運行開始時に大幅な利便性向上を実施し、公共交通への取り組み姿勢を明確にしたこと。

・路線とダイヤづくりのコンセプトが明確で、使いやすい路線・ダイヤとしていること。

・「飲み屋さん別時刻表」の作成など、町民サイドに立ったMMを継続的に実施していること。

・独自に開発したGPS利用の案内情報システムによって、駅・病院等で運行状況や遅れを表示。地方小都市としては極めて洗練されたバスシステムとなっていること。

・地元の富山県立泊高校では、観光ビジネスコースにおいて「はしれ!まちバスモビリティマネジメントの実際を学ぶ」をテーマに1年間の演習型講義を実施するとともに、交通調査や臨時バスの観光ガイド、案内システムのコンテンツ作成などのMMに取り組んだこと。

以上のようなことによって、町内のバス利用者は運行開始時の2.5倍以上となっており、「地方の小さな町でも、適切な政策と、町民と連携したMMによって利用者数を大幅に増やすことができる」ことを示した。

JCOMM実行委員会から

本プロジェクトは、地方小都市において、低コストのIT化や需要喚起につながる情報提供、高校でのMM講義等の行動変容を促すコミュニケーション手法を展開し、3年3か月にわたり前年同月増を継続する成果をもたらしており、「交通上の諸問題の緩和に対する実質的貢献」、「交通上の諸問題の抜本的緩和に繋がり得る新規性」において、高く評価され、JCOMMプロジェクト賞として選定されました。


題目 電車混雑予測
受賞者

株式会社ナビタイムジャパン

受賞概要

本プロジェクトは、ナビタイムジャパンが運営する乗換検索アプリ「乗換NAVITIME」「NAVITIME」にて、電車混雑シミュレーション技術に基づいて予測した、首都圏朝ラッシュの各列車の停車駅ごとの混雑度を、ルート検索結果と連動して表示したものである。

鉄道混雑は首都圏の交通インフラに残された大きな課題である。鉄道各社は、独自のアプリやWebサイト上で混雑率情報を公開し混雑の平準化に取り組んでいるものの、複数会社の路線の情報を、ユーザごとに最適な形態・タイミングで伝えることは難しかった。そこでナビタイムジャパンでは、公開統計や1駅ごとの現地調査データ、および経路探索エンジンを援用した電車混雑シミュレーションに基づく「電車混雑予測」を開発した。その結果を基に、乗換検索アプリを通じた混雑情報の提供、および列車ごとの混雑状況を可視化した「電車混雑動画」の配信を2016年4月18日より開始した。

本サービスの主な特長は次の通りである。

 1)ユーザの発着地や希望日時に応じたルート検索結果に連動して混雑度が表示されるため、空いている経路を選びやすい。

 2)混雑列車を回避したルートを優先的に表示しているため、空いている列車を発見できる。

 3)複数社・複数路線・朝の幅広い時間帯の情報を基に、空間的・時間的な混雑回避が可能。

 4)子供連れや体の不自由な方などが安心して乗れる列車を見つけられる。

 5)シミュレーションに基づく予測のためダイヤ改正時にもデータを更新可能。

今後も当社は、サービスの利便性向上や混雑データの拡充に努めていく。本プロジェクトの推進により、ユーザ一人ひとりが快適に移動できるようになるだけでなく、交通網全体の混雑平準化、さらには鉄道会社による混雑緩和や着席列車の設定などの取組が促進され、公共交通網全体のサービスレベルや安心感が向上することで、公共交通の利用が促されると期待される。

JCOMM実行委員会から 鉄道車両の混雑度をサービス水準と捉えて可視化することで、利用者の行動変容を促し、混雑の平準化を図るための良質な情報提供ツールです。混雑度は色で分類され、きめ細やかに直感的に理解できる美しいデザインで表示されています。鉄道混雑問題は、大都市に限った課題であり、日本国内における汎用性はやや乏しいが、アジアのメガシティなどへの応用は可能という意見もありました。以上のように、鉄道混雑緩和というこれまでにない視点の斬新さと、意匠性と機能性が高く評価され、JCOMMデザイン賞に選定されました。

題目 副読本「私たちの暮らしを支える公共交通」と教師向け指導書
受賞者

札幌らしい交通環境学習プロジェクト

札幌市まちづくり政策局 総合交通計画部 都市交通課

一般社団法人 北海道開発技術センター

受賞概要

札幌市では、札幌市内の全小学校において、交通環境学習の拡大的展開を目指し、教諭を主体としたプロジェクトメンバーで構成した会議で、小学校校長、札幌市教育委員会、行政とともに、交通環境学習の研究授業の指導案を検討し、平成23年度より21本の研究授業を実施している。

平成26年度に、本メンバーにおいて、小学校学習指導要領の内容に最も適した学年・教科を選定し、3年生社会科の単元に沿った副読本を作成した。掲載内容は、札幌市に関係するものとし、子どもたちにとって、より身近に感じられる教材となっている。また、副読本に採用するイラストついては、本メンバーである教諭らにヒアリングを行い、対象となる3年生の授業教材として集中力を欠くようなデザイン(華美な装飾・個性的なキャラクター設定)を避け、好まれるテイストを選定した。加えて、教諭にも好まれるようトレンドも意識し、風化しづらいデザインテイストに配慮した。

平成27年度には、副読本を活用した研究授業を踏まえ、副読本の普及・活用を目的に、本メンバーから5名の教諭を選出し、プロジェクトの監修の元、教師向け指導書を作成した。指導書は、副読本に対応し、学習指導要領に準じた授業内容にするとともに、新卒の教諭でも授業づくりがしやすいよう単元構成と本時案を掲載し、授業イメージをつきやすくする工夫として、授業毎の板書も掲載した。さらに、デザイン面でも、副読本との連動性や使いやすさに配慮し、教諭の目に止まるよう興味・関心を持つ内容をポイント化し表紙に特出した。

副読本及び指導書の作成においては、教諭が教諭のために使いやすさを追求したもので、授業の指導案や資料等は、誰でも自由に使用できるように札幌市のHPに掲載している。また、本プロジェクトで実践した研究授業の指導案と副読本が平成26年度改訂の札幌市小学校「教育課程編成の手引き」※で紹介された。

本市においては、今後も本プロジェクトを継続し、授業に関する資料・素材等を作成・収集し、HPの充実を図り、交通環境学習をより多くの小学校に広げていきたいと考えている。

※札幌市教育委員会発行の札幌市内の全小学校教員に配布される、学校教育の指針が明記されたもの。

JCOMM実行委員会から 秀逸なデザインの小学生用教材に留まらず、教員の使い勝手をも熟慮した教員用資料もセットとなった、機能性の高い良質な教材群です。小学校での学校MMは総合的な学習の時間に行われることが多く、小学校の都合や政策に左右されることも多かったが、本教材は社会科の副読本として取り入れられており、その実務的可能性も高く評価されています。以上のように、意匠性、機能性、実務的可能性のいずれもバランス良い点が高く評価され、JCOMMデザイン賞に選定されました。

題目 「観光・まちづくりと一体となった地方鉄道再生」~需要追随型から需要創造型のマネジメントへ~
受賞者

北近畿タンゴ鉄道 生活交通改善事業計画に関する協議会

受賞概要

京都府北部の丹波、丹後地域と兵庫県北東部の但馬地域を走る北近畿タンゴ鉄道は、利用者数と運輸収入がいずれもピーク時の約3分の2まで減少するなど経常損失の拡大に歯止めがかからず大変厳しい経営状況に追い込まれていた。廃線も含めたあり方が議論されたが、いま一度再生に向けて、抜本的な経営改革と収支構造の改善を図る鉄道事業再構築に地域全体で取り組み、平成27年4月に京都丹後鉄道として新たなスタートを切った。

人口減少・少子高齢化の進展など地方鉄道を取り巻く環境は厳しさを増す中、地方鉄道の再生を図るには需要追随のこれまでのやり方を見直し、需要を創造することが重要である。まちづくりの視点から地域全体のマネジメントを行うとともに時代にふさわしい設備整備が必要となる。

そのため、「海の京都」による観光まちづくり、市町域を越えた都市機能の相互補完を進める京都府北部地域連携都市圏づくりとともに、北近畿タンゴ鉄道の経営体制の刷新に取り組んできた。具体的には、「海の京都」によるデザインマネジメント(デザイン車両の導入等)、駅舎の改修、観光地の修景整備、新たな周遊ルートの整備、北近畿タンゴ鉄道の上下分離方式の導入、使いやすいダイヤづくりなどを官民が連携して実施してきた。

その結果、沿線地域では民間の設備投資が進み、平成27年4月に京都府北部地域連携都市圏の関係首長による形成推進宣言がなされた。京都丹後鉄道の開業初年度の利用者数は㉖184万人→㉗187万人(対前年度比約102%)となり、5年ぶりに前年度実績を上回った。観光・まちづくりと一体となって沿線の交通需要創造を進めるこれまでにない地方鉄道の再生の取組が地域に活力と希望をもたらしている。

JCOMM実行委員会から

地域公共交通網形成計画に、観光による公共交通・地域再生を位置づけた地方鉄道再生の先駆的な取組であり、ハードとソフトの連携、行政内部および民間も含めた幅広い連携など、地方の鉄道の活性化・再生において参考にすべき内容が多く含まれている点が高く評価され、JCOMMマネジメント賞として選定されました。


題目 持続可能なMM教育から始める交通まちづくりの縁
受賞者

川西市・牧の台小学校区コミュニティ推進協議会

兵庫県阪神北県民局・能勢電鉄(株)・阪急バス(株)

牧の台小学校・松村暢彦(愛媛大学社会共創学部教授)

猪井博登(大阪大学大学院工学研究科助教)

川西市公共交通会議・川西市教育委員会・公益財団法人ひょうご環境創造協会

公益財団法人交通エコロジー・モビリティ財団

受賞概要

川西市のMMは、平成14年度に先駆的に取組み、平成18年度より小学校教員との密なコミュニケーションを通じて、地域特性を反映したMM教育を継続的に実施してきた。これらの実績を踏まえて「第5次川西市総合計画」「川西市都市計画マスタープラン」にMMの推進を明記することで計画的にMMが実施できる環境を整えてきた。そして、人口減少を迎える中、公共交通のあるべき姿を提示し実現するため平成26年度に「川西市公共交通基本計画(かわにし交通ピースプラン)」を策定し、MMを重要な政策の柱として改めて位置づけた。それだけではなく、これまでの住民、行政、交通事業者そして学識の協働により、地域密着型の住民主体MMの取組み経験を他地域にも展開していくために、「地域公共交通実施計画」制度を設けて、順次拡大しつつある。

MM教育を推進して行く中、児童の保護者が核となり、保護者を中心に交通まちづくりの縁が広がり展開した結果、減り続けていた地域のバス利用者は年々増加し、平成27年度には、平成24年度と比べ、約1.45倍の年間30万人をこえる実績を残した。

一方、MM教育の授業を受けた小学生へのアンケート結果では、算数の割合の単元において4割程度が理解しにくい中、地域の調べ学習を行いグラフ化等にまとめることで、1割に減少した。また、保護者に対するアンケートでは、児童によるMM教育の発表会、地域のスーパー及び郵便局等で成果品を掲示したことにより、バスは地域の財産と気づき、バスに乗ったことが無い保護者の50%がバスに乗った。

そして、MM教育を実施し4~6年後の追跡アンケート調査では、MM教育の受講者は「まちづくりや公共交通の取組を手伝いたい」と言った項目で、未受講の生徒と比べると1割程度高く(有意差あり)、MM教育の地域愛着形成に効果が確認できた。

JCOMM実行委員会から 平成14年度から現在まで継続的に改善を経ながら取り組まれており、都市計画マスタープランにおいてMM教育の推進が明記されていること、また、「かわにし交通ピースプラン」といった上位関連計画をふまえて、教育MMの取り組みや「地域公共交通協議会」など独自の推進体制など、長年にわたる地域主体の活動の展開がなされ、近年のバス利用者数も増加しており、効果も顕在化しています。大都市ではないことを逆手に取り、きめ細やかなマネジメントを展開してきたことが、今後の他地域への展開可能性も大きく、JCOMMマネジメント賞として選定されました。

題目 消費者の買い物行動時の選択店舗の相違が地域経済に及ぼす影響に関する研究
受賞者

西 広樹(国土交通省九州地方整備局宮崎河川国道事務所交通対策課)

宮川 愛由(京都大学大学院工学研究科)

小池 淳司(神戸大学大学院工学研究科)

福田 崚(株式会社帝国データバンク)

佐藤 啓輔(復建調査設計株式会社総合計画部社会基盤計画課)

藤井 聡(京都大学大学院工学研究科)

受賞概要

地方創生が叫ばれる中、とりわけ地方自治体において、今後、交通手段の転換のみならず、「目的地」の変容による「まちなか活性化」が都市交通行政における重要な課題の一つとなるものと考えられる。しかしながら、筆者らが知る限り、多くの自治体が抱えている「まちなか活性化」に資する有効な動機づけ情報は乏しく、ほとんどが店舗情報やイベント情報の提供に留まっているのが現状と考えられる。

そこで、本研究は、人々の私的活動を郊外から都市部へ誘導するための「明確」で「説得力の高い」動機づけ情報を検討した。具体的には「大型店舗」と「地元店舗」における買い物行動を比較し、どちらが、より、地域経済にプラスの効果をもたらすかについて、複数の統計データ、財務諸表、商業店舗、流通業者へのヒアリング調査により可能な限り実証データを取得しつつ、推計を行った。その結果、買い物支出のうち地域に帰着する割合が、「大型店舗」では「地元店舗」の半分程度であることが示された。

本研究成果は、人々がクルマを利用して、郊外の商業施設で買い物をすればするほど、地元「以外」の地域にマネーが流出する、という現象を示唆するものであり、クルマ利用によって促進される私的活動の郊外化がもたらす「デメリット」について専門知識を持たない一般の人々に対しても明確でわかりやすく伝えるための有効な動機づけ情報であり、これまでMMが全国の多くの都市において貢献してきた渋滞の解消や公共交通の利用促進等に加えて、「まちなか活性化」という新たな可能性を後押しするものと期待される。

JCOMM実行委員会から

本研究は、モビリティマネジメントを推進するうえで、住民の自動車依存の大型店からの転換を動機付ける資料として非常に有効と考えられます。また推計の手法も限定された資料の中で、様々なデータを活用することで極力信頼性を高める方法も技術賞としてふさわしいと評価され、JCOMM技術賞に選定されました。