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〈ニッポンのMM〉松江市における教育機関と企業が連携したTDM施策〈第36回〉

建設技術研究所 五十嵐達哉(東京本社 交通システム部)/中原圭太(九州支社 道路・交通部)/小松秀晃(大阪本社 道路・交通部)


1. はじめに

 松江市で渋滞対策として実施しているTDM(交通需要マネジメント:Transportation Demand Management)の取り組みを紹介します。

2. 渋滞対策におけるTDM

 渋滞緩和に向けた取り組みでは、道路拡幅やバイパス整備などのハード対策だけでなく、TDMなどのソフト対策が両輪で実施されています。特にTDMについては、コロナ過における外出抑制時に渋滞が緩和したこと、コロナ以後テレワークや時差出勤など新たな働き方が社会に浸透してきたことから近年積極的に取り組みが進められています。また、ITの進展により交通に関するビッグデータが活用できるようになったこと、道路利用者等への情報提供手段が多様化したこともTDM推進の後押しになっています。 

3. 松江市におけるTDMの取り組み

 上記のような状況を踏まえ、松江市ではコロナ以後の令和3年度からTDMにより渋滞緩和を目指す取り組みが進められています。渋滞対策に関するTDMでは、①時間帯の変更、②経路の変更、③交通手段の変更、④自動車の効率的利用、⑤発生源の調整がありますが、松江市では渋滞区間を迂回する道路がないこと、自動車からの転換を支えられる公共交通が少ないことなどから、①時間帯の変更、⑤発生源の調整を中心に検討しています。

(1)令和3年度の取り組み(Hop)

 ETC2.0データの分析により、渋滞発生時刻を特定し、その前後に少しずらすことでの時間短縮効果を定量的に示し、利用者の行動変容を促しました。住民への周知として横断幕やYouTube広告等を実施し、YouTube広告では、5秒スキップ再生回数:6.47万回、全再生回数:2.12万回(中国地方整備局公式のYouTube動画暫定1位)になりました。

 本取り組みにおいて、若干の交通量シフト(時間変更)が見られましたが、効果は限定的でした。


(2)令和4年度(Step)
 出勤時間の変更(時差通勤)においては、利用者だけは判断できず、企業の勤務形態等が重要と判断し、松江市商工会議所所属の2,800社に広報チラシを配布しました。時差通勤導入に関する企業側のメリットが少なくなかなか協力が得られない中、「リクルートにつながるのであれば取り組む企業は多い」との気づきを得ました。

 

(3)令和5年度以降(Jump)

 地元企業の時差通勤参画モチベーションを高め都市圏全体として時差通勤による渋滞緩和を目指していくため、島根大学・松江高専の学生と連携した「松江Good Morning Project 👍」を立ち上げました。

 「松江Good Morning Project 👍」は、「渋滞だけじゃない、みんなが働きやすい社会へ」をキーワードに、地域の学生と企業をマッチングすることで、双方メリットを生み出し、取り組みの促進を図るものです。時差通勤に向けた企業との意見交換や広報周知を学生が主体となって行うことで、「学生が企業を」、「企業が学生を」知る機会を創出するとともに、学生にとって魅力的な職場環境の構築に関する企業のモチベーションアップを目指しています。

 令和5年度には、学生のアイディアによるチラシ・ポスター作成や学生が実際に企業を訪問し、本プロジェクトのPRを行うなどの取り組みを実施しました。令和6年度には賛同してくれる企業が8社に増加するなど取り組みが広がっており、今後の更なる拡大に向けたロードマップを作成しました。

(3)令和5年度以降(Jump)
 地元企業の時差通勤参画モチベーションを高め都市圏全体として時差通勤による渋滞緩和を目指していくため、島根大学・松江高専の学生と連携した「松江Good Morning Project 👍」を立ち上げました。
 「松江Good Morning Project 👍」は、「渋滞だけじゃない、みんなが働きやすい社会へ」をキーワードに、地域の学生と企業をマッチングすることで、双方メリットを生み出し、取り組みの促進を図るものです。時差通勤に向けた企業との意見交換や広報周知を学生が主体となって行うことで、「学生が企業を」、「企業が学生を」知る機会を創出するとともに、学生にとって魅力的な職場環境の構築に関する企業のモチベーションアップを目指しています。
 令和5年度には、学生のアイディアによるチラシ・ポスター作成や学生が実際に企業を訪問し、本プロジェクトのPRを行うなどの取り組みを実施しました。令和6年度には賛同してくれる企業が8社に増加するなど取り組みが広がっており、今後の更なる拡大に向けたロードマップを作成しました。

4. おわりに

 渋滞緩和は、移動時間の短縮、道路利用者の満足度向上だけでなく、CO2削減など環境課題の解決、地域の魅力向上にも寄与します。今後も学生・企業・教育機関・自治体・道路管理者が連携し、本取り組みを推進していきたいと思います。
 なお、本取り組みは、国土交通省 中国地方整備局 松江国道事務所様の業務の中で、検討・実施したものです。本掲載に関し、松江国道事務所様にご協力いただきましたことを感謝いたします。

※本記事は、エコ通勤メールマガジン 第28号(2025.4.16)(発行:エコ通勤優良事業所認証制度事務局)に掲載されたものです。

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