新型コロナウイルス感染症の拡大を受け、一般社団法人日本モビリティ・マネジメント会議(JCOMM)では、公共交通に対する政府による迅速な支援を求めるとともに、公共交通利用時のコロナウイルス感染リスクを「正しく」理解したうえで、国民の皆様に「安全」に公共交通を利用いただくため、様々な情報発信を行ってまいりました。
非常事態宣言が解除され、外出する人が増え始めました。しかし、通勤・通学等での公共交通の利用に不安を感じる利用者、夏を迎えるにあたって空調の使用下での換気など、運行に不安を感じる事業者もおられると伺っております。我々の社会がコロナを乗り越えていくにあたって、感染リスクを下げる移動や公共交通の乗り方について理解を深め、安心した外出や生活・経済活動を支えることが不可欠です。
そこで、このたびは、『まちの復活は公共交通から』の考えのもと、公共交通での正しいコロナへの対応の仕方についてウイルス学の専門家を交えて検討・発信することを目的に、第二弾となる緊急オンライン会議を開催することといたしました。
公共交通の新型コロナへの対応について考え、人々の暮らしと街を守るために、そのために政府にできること、公共交通事業者ができること、我々市民にできることは何か、今後の方策を考える機会になれば幸いです。
日時:2020年7月12日(日)14:00~15:00
場所:オンライン開催
参加費:無料
視聴方法:https://youtu.be/WRcQqgqIzOA
主催:(一社)日本モビリティ・マネジメント会議
(略称:JCOMM(読み:ジェイコム))
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・進行:神田 佑亮(JCOMM実行委員会幹事長,呉工業高等専門学校 教授)
・企画趣旨:藤井 聡(JCOMM代表理事,京都大学大学院 教授)
・「公共交通での正しいコロナへの対応のしかた」
宮沢 孝幸(京都大学ウイルス・再生医科学研究所 准教授)
聞き手:藤井 聡
※画像をクリックすると視聴ページに飛びます
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※7月12日のシンポジウムでの質疑の要点をまとめたものです。
各質問をクリックすると【回答動画リンク】(再生位置調整済み) と【回答要点】をご覧いただけます。
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日本の公共交通でクラスター感染が発生している報告はない。これまでのデータから判断するに空気感染の可能性はほぼゼロに等しい。 大都市部での感染拡大・収束状況は地方の都市部とさほど変わらないことが示されている(大阪大学核物理研究センター 中野貴志教授公表データによる)。 もし公共交通で感染が拡大するのであれば、大都市部と地方の都市部で感染状況が異なるはずだが、それは見られない。つまり、公共交通での感染の可能性は低いことがわかる。 |
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感染を防ぐためには経路を遮断することが大事。空気感染しないように換気をする、飛沫感染しないようにマスクをする、接触感染しないように目鼻口を触らないということがポイント。 マスクをしていなくても話さなければ大丈夫。もし、咳、くしゃみをしたくなった場合には袖等で口をふさいでもらえれば大丈夫。 |
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ソーシャルディスタンスというのは、口元で行うコミュニケーションの慣習上、マスクに抵抗感がある欧米で提唱されているものである。マスクをしていればソーシャルディスタンスは不要である。マスク着用に対する抵抗感が低い日本では特段必要ない。先に示した3つの感染防止対策を守っていればソーシャルディスタンスは必要ない。 |
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隣り合う乗客がお互いマスクをしていれば隣席に座っても大丈夫。また、会話する際も小声で話すことや、換気を行うことで、感染可能性が低い呼気等から漏れるウィルス等に対しても万全を期すことができ、満席でも感染リスクはほぼゼロになる。 |
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基本的には「マスクをする」「目鼻口を触らない」「換気をする」ことで感染可能性はほぼない。外気を取り込む換気を十分にすることがポイント。 |
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乗客との会話の際の飛沫感染を防ぐためにビニールカーテンは有効。ただし、乗客がマスクをつけていれば問題ない。ただ、外国人旅行客等がマスクをしていない場合も想定されるのでビニールカーテンはあった方がいい。 運転席後方の座席の使用禁止については、乗客のつば等が運転手にかかることは想定しにくいし、運転手がマスク着用、目鼻口を触らないことを実践していることを考えると感染可能性はほぼゼロ。座席の使用禁止にすること自体は特に効果はない。 |
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人の顔同士が近接するような混雑状況だと、咳やくしゃみ等でマスクから漏れたウイルスが顔にかかるような可能性が考えられる。 ただ、コロナウイルスが日本に入ってきていた2月頃は現状よりも混雑していて、そうした状況でも爆発的に感染拡大しなかったことを踏まえると、状況証拠として感染の危険は低いと思われる。 こうしたことを考えると、ぎゅうぎゅう詰めとなるような状況は避けることが望ましいが、マスクを着用して会話しないことを守ればある程度の混雑は問題ないと考えられる。 |
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Q5-1. 窓を閉め切っていても「外気導入」のエアコンは有効か? 2月頃は換気していなくても爆発的な感染拡大はなかったことを考えると、ぎゅうぎゅう詰めの状態では安全とは言い切れないが、ある程度の混雑状況であれば外気導入の形で換気をすることで問題ない。(※換気設備の性能が十分であるとの確信が無い場合は、前方と後方の窓を開けておく等の対応も併用することが望ましい) Q5-2.路線バスでは、バス停停車の際の扉の開閉が有効な換気となるか? ぎゅうぎゅう詰めでの安全は言い切れないが、有効である。窓や扉の開閉による換気は、全開でなくても、車内前方と後方の窓を開けて車内の空気の流れを確保することがポイント。 ※バスの場合、換気機能により車内の空気は3~7分で入れ替わります(参考:三菱ふそう製バスの換気性能一覧)。 |
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旅客船はすし詰め状態になることは少ないと思われる。そうしたぎゅうぎゅう詰めの状況でなければ通常の換気で問題ない。空気感染というのは、換気をしない状況で数時間過ごすといった特殊状況でないとめったに成立しない。旅客船においても、「換気をする」「目鼻口を触らない」「なるべくしゃべらない。話す際にはマスクを着用して小声で」の三つを守っていれば問題ない。 |
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不特定多数の乗客が触っていることを考えると、運行中につり革等にウイルスが付着する可能性は常にある。したがって、頻繁に消毒をすることに越したことはないが、四六時中消毒することは不可能。 そのため、つり革などを介した「接触感染」の防止のためには、運行開始前や休憩時間などの時間があるときに、補足的に消毒することには意味があるが、それよりもむしろ、乗客の方で自衛をしてもらうことが全ての基本とすることが必須。したがって、感染リスクを正しく伝え、「マスクの着用」や「大声でしゃべらない」、「目鼻口を触らない」、「目鼻口を触るとしても手指を消毒する」といったことを呼びかけて協力してもらうことが必要。 感染メカニズムを正しい理解を促すことが大事。「つり革を触っただけでは感染はしない。汚染した手で目鼻口を触ると感染する」「微量のウイルスが体内に入ったとしても体内の自然免疫が働くため大事にはならない」「肺炎になるといわれるコロナの場合は感染経路となりやすい口や鼻からの侵入に特に気を付ける」ことを頭に入れてもらうことがポイント。 |
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ワクチンが完成するまで対策は続けなければならない、としばしば言われるがワクチン完成以前に大幅に対策を緩和できる可能性も十分ある。つまり、今年の冬頃に来ると言われている次の流行が大きな被害をもたらさないという結果になれば、それ以後は「8割自粛」などの大きなコストが罹る対策については大幅に緩和するという判断となる可能性がある。 ただし、手洗い、目鼻口を触らない等の各人の生活習慣の変容にのようなコストが大きくかからない感染対策については、念の為に「継続」していくことも可能と考えられる。そのためにも、一人一人が感染のメカニズムを理解し、ウイルスに感染しない行為をとることが重要となる。 |